美容院で貸し切り

そうだ、美容院へ行こう

地元には行きつけの美容院がある。行く頻度はそんなに高くない。2ヶ月から2ヶ月半に1度というくらいだ。
わたしは髪にカラーリングをしている。カラーをしてから1ヶ月もする頃には、根元から黒かったり白かったりする髪が出て目立ってくる。
黒だけならまだしもだが、白かったりする髪がいらんものだ。それを見たくないがために美容院へ行っているようなものだ。

ちなみに家で自力でカラーをしようとは思わない。なぜなら市販のカラー剤にアレルギーがあるからだ。以前それでえらい目に遭った。
そのあたりを知りたいという奇特な方は『顔がボールになった日』をお読みくださるといいかと思う。宣伝でした。

というわけで、カラーとかカットとかトリートメントとかしてもらうために定期的に美容院へ行く。
話は少し変わるが、この美容院のオーナー美容師はかなりのイケメンだ。

美容院に通うようになってかなり長いので、わたしは彼が20代の頃から知っているが、本当に王子様のようなイケメンだった。いつの間に地元にこんなイケメン美容師が誕生していたのかと驚いたものだ。

彼も今は40代になるが、今でも王子様系のイケメンっぷりは変わらない。年齢的にはイケオジというべきかもしれないが、あまりにもオジサンという呼称が合わない。やはりイケメンというべきだろう。

眼福なり

イケメンとマンツーマン?

さて、わたしは今日もイケメン美容師に会いに来た、じゃなくて髪の手入れをしに来た。
そうだよ、髪の手入れが第一目的なんだよ。けして乾いた日々にイケメンの癒やしを求めて来ているわけではないんだよ。まったくのところ。

訪れて驚いた。いつもイケメン美容師の他に2、3人はスタッフがいるのだが、今日に限ってはスタッフがひとりもいない。
広い店内にイケメン美容師のみだ。
いつもなら2、3人いるお客もいない。わたしだけだ。

仕事をセミリタイアしてから、美容院に来るのはもっぱら平日になったが、それにしても誰もいないというのは不思議だ。
聞いてみれば、休暇だったり体調不良だったりでスタッフが皆休んでいるという。

なので、オーナー美容師が自分ひとりで対応できるよう、予約を調整して、この日は同じ時間帯にはひとりのお客しか入れていないというのだ。
え、ということは、この時間帯のお客はわたしひとりだけ?
イケメンとマンツーマン?

はい、イケメンとマンツーマンです。
イケメン美容師はわたしに今回の施術の注文を聞いてくれる。それを聞いたあとは、いつもならスタッフがケープをかけたりその上からタオルをかけたりとかしてくれるのだが、今日はすべてイケメン美容師が自らやってくれる。

カラーをするときは、耳にカバーをするのだが、それもイケメン美容師がやってくれる。
ひとりしかいないからあたりまえかもしれないが、なにからなにまでイケメン美容師がやってくれる。

わたしとイケメン美容師はにこやかに会話などを交わす。広い店内には静かな音楽が流れている。
聞こえる声はイケメン美容師とわたしの声だけだ。

わたしは思った。お、落ち着かない。
他にはお客が誰もいない美容院で美容師とマンツーマン。なにこのセレブな状況。

わざわざいうのもなんだが、わたしは貧乏性だ。ついでにいうなら小心者でもある。
小鳩の心臓の持ち主と呼んでくれてもいい。

美容院を貸し切り状態にして、イケメン美容師を独り占め。
……無理だ。わたしにはハードルが高すぎる状況だ。

なんて贅沢な時間だろう

庶民なんです

その昔映画を見にいったら映画館に誰もいずに貸し切り状態になったことがあったが、そのときも『この映画はわたしのためだけに上映されている』というセレブな発想にはなれなかった。

あのときもひどく落ち着かなかったものだ。上映されていた映画がサスペンス調のものだったから余計落ち着かなかった。
わたしの庶民っぷりは筋金入りなのだ。

この状況は、もったいないを通り越してすでに罰ゲーム状態だ。
いやだめだ、めったにないこんなチャンスをじっくり味あわないなんて。
わたしの中で相反する感情が渦巻く。

イケメン美容師はにこやかにいろんな話題を振ってくれる。
わたしは顔がひきつらないように笑顔を作るので精一杯だ。

そしてわたしはイケメン美容師にカラーをしてもらい、待ち時間用にとコーヒーを淹れてもらい、シャンプーやトリートメントをしてもらい、カットをしてもらった。

わたしは存分に贅沢な時間を過ごした。これから先、こんな贅沢な時間を過ごすことがあるだろうかと思うくらいだ。
ちょっと尻のすわりは悪かったけどね。

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