
原付に乗っていた頃
車の免許を取ったのが遅かったので、わたしはかなり長い期間原付に乗っていた。
話はいきなり逸れるが、原付の正式名称が『原動機付自転車』だと知ったときはちょっとショックだった。え、これって自転車の仲間なの? バイクじゃないの? みたいな。
バイクじゃないわけではない、よね?
まあそれはともかくとして、これはわたしが原付に乗っていた頃の話。
当時は駅のそばに無料の駐輪場があったので、電車を使うときはそこに原付を止めていた。
駅の近くには自宅の一部を駐輪場にしている家が数軒あるのだが、預けると当然だがお金がかかる。学生時代でお金がないわたしはもっぱら無料の駐輪場を利用していた。
よくイタズラされていた

何度もイタズラされたよ!
だがしかし、なんせ無料のスペースだから屋根もないし、管理する人がいるわけでもない。
無料の駐輪場に置いていた頃は、よく原付にいたずらをされていた。
タイヤがパンクしていたことは数え切れない。
専門学校時代は電車通学していた。ようやく駅に帰り着いて、さあ後は原付に乗って帰るだけ、と思って駐輪場へ行くと、原付のタイヤがパンクしている。
パンクしたからには修理に出さないといけない。が、わたしがお世話になっていた自転車屋は駅から遠かった。
さてどうしようと悩み、結局パンクした原付をなんとかひきずりながら自転車屋まで歩く。(タイヤになおダメージを与えたかもしれない)
重い原付に重い画材が入ったバッグを乗せてひきずりながら歩く道のりのなんと遠いことだろう。
息を切らせてようやく自転車屋にたどりつき、修理を依頼する。
自転車屋のおじさんはわたしの原付を見て「ああこりゃ、いたずらされてるね。タイヤに穴がいくつも空けられてるよ。1、2、……おお7つも穴がある」と言う。
疲労と怒りで頭が煮えそうになる。
無料駐輪場に止めていた頃に何度も被害に遭ったので、自分でお金を稼ぐようになってからは、駅近くの有料駐輪場を使うようにした。(まあここでもいたずらされたことはあるけどね!)
雨が降ったりすると

冷たい雨が……
無料駐輪場を使っていた頃のまたある日、その日は雨だった。朝のうちはなんとか保っていたので原付で家を出たのだが、その後雨が降り出した。
あーあ、とわたしは思う。その頃使っていた原付は、ヘルメットをシートを開いたところにあるフックにかけるタイプだった。ヘルメットは外に晒されている。
夕方、駐輪場に戻る。雨はなんとかやんでいたが、やはりだ、原付もヘルメットも濡れている。特にヘルメットだ。
ヘルメットの内側にはスポンジが貼られているが、思いきり水を吸っている。
スポンジが含んだ水を絞れるだけは絞り、ノーヘルで走るわけにもいかないので、濡れたヘルメットを被って原付に乗る。
走っているうちに、水を吸ったスポンジからたらたらと水滴が垂れてくる。髪はすでにぐっしょりだ。
水滴は衿から服の中に入りこんでくる。
冷たい水がいく筋も肌を走る感触に震えながら原付を走らせる。
とうに雨はやんでいるのに、わたしの体だけはどんどん濡れていく。
こんなことを何回も経験しながらも、車の免許を取る決心はなかなかつかなかった。
代わりに、次に買う原付はメットインのタイプにしよう、と誓った。