
ワクチン接種の話

初めての病院は緊張するね
家の近くにかかりつけ医がなかったので、ワクチン接種をするときにちょっと困った。
ので、近所の病院で1回目と2回目のワクチン接種を受けた。今後のかかりつけ医にするつもりだったので、内科系の病院を選んだ。
対応はよかったので不満はない。解熱鎮痛剤を処方してもらうのに必要だったので、診察カードも作った。初診料がかかったので少々お財布に痛かったが、これも必要経費だろう。
3回目のワクチン接種という話になったときも当然同じ病院で受けるつもりだった。
が、いつの間にかその病院は閉院していた。
結局ワクチン接種以外でお世話になることはなかったよ。せっかく診察カードを作ったのに。
ここいらあたりの話は『それはわたし編』の『ワクチン接種はどこで受けるか』に書いているので読んでいただけると嬉しい。宣伝でした。
というわけで、3回目の接種は別の病院を探すことになった。
前回と同じで今後のかかりつけ医にと考えたので、診療する科目が多いところにした。
見つけた病院は家からも徒歩圏内にあり、具合が悪いときでもたどり着けるに違いないと思える。
接種の予約はネットでしたので、病院の中に入るのは接種当日が初めてだった。
予約時間の少し前に病院に到着した。院内に入ると、待合スペースの椅子にはもう10人以上が座っている。ワクチン接種の人とそれ以外の患者とどちらもいるようだ。
受付で書類を出して受付表に名前を記入する。
あとはソファに座って順番を待つだけだ。ご時世なので、ソファはひとりおきでしか使えないようにバツ印を書いた紙が貼られている。
待合スペースのテレビでは高校野球が放映されていた。テレビに熱心に見入っている人も多い。
わたしは診察室からほど近いソファに腰を下ろし、スマホでKindleに落とした電子書籍を読み始めた。いまいいところなんだよ、続きが気になる。ライトノベルですが、なにか?
名前を呼ばれた
さほど読み進める間もなく、診察室から出てきた看護師の女性に「オキハタ様」と名前を呼び上げられた。
おや、意外と早かったね。
はい、と返事をして診察室に入る。
診察室には60代と思われる男性医師がいた。顔よりも先に、ぽこりん、となっているお腹に目がいってしまったのは内緒だ。
医師の前にあるパイプ椅子に腰かける。医師は手元にある問診表(?)を見て言った。
問診表は、市役所からの書類に入っていた、「アレルギーはありますか、今日の体調は良好ですか『はい いいえ』」などが書かれた表のことだ。
「接種は1回はモデ○ナを受けているんですね」
医師の言葉にわたしは首を振る。
「いいえ、2回ともファ○ザーです」
え、と医師は手元の紙を見、わたしも、え、という顔になる。
ついでに背後にいた呼び上げをしていた看護師の女性も、え、と言った。
「えーと、オキハタハナコさん?」
問診表を見ながらの医師の言葉に、ようやくわたしは気づいた。
わたしの名前はハナコではなくアサヒだ。
名前を呼び上げられたときに姓だけだったので反応してしまったが、同じ姓の女性がもうひとりいたんだな、これ。
診察室に近い位置のソファに座っていたので気づかなかったが、待合スペースの中でわたし以外に呼び上げに反応した『オキハタさん』がいたに違いない。
わたしが立ち上がったので、向こうのオキハタさんも、え、と思ったことだろう。
そのまま接種をすることに

割り込みしたような気まずさが
「オキハタさんが2人いたんですか」
看護師が言いながら、医師の机の上に積まれていたバインダーを見る。
どうやら受付した順番に積まれているらしいバインダーの、4枚目か5枚目にわたしの問診表が挟まれているバインダーがあった。
本来なら4、5人あとがわたしの順番だったのだ。
どおりで、待合スペースに待っている人数のわりに呼ばれたのが早いと思ったよ。
「オキハタ違いのようですね」
わたしは椅子から立ち上がった。待合スペースに戻って、本来の順番まで待つつもりだった。
「ああ、いいですよ。打ちましょう」
「え、そうですか」
医師に促されて、わたしは再びパイプ椅子に腰を下ろす。
右腕と左腕、どちらに打つかと聞かれて、左腕を差し出した。
うーむ、意図したわけではけしてないが、なんだろう、この横入りしたような気まずさは。
ワクチン接種はすぐに終わり、わたしは待機室へ移動することにした。
さきほどの看護師の女性が、待合スペースで呼び上げをしている。
「オキハタ様、オキハタハナコ様」
今度はフルネームで呼んでいる。呼び上げに反応して立ち上がったのは、わたしと同年代に見える女性だった。なるほど、書類だけではわたしと彼女と見分けはつかないだろう。
あの女性の前回までのワクチン接種がわたしと同じ内容だったら、今日は間違えられたまま接種をしていたのかな、とちらりと思った。
順番取ってしまってごめんなさい、とわたしは心の中で詫びる。ヘタれなんですよ、ええ。
待機時間が終わって帰るときに、念のためにと解熱鎮痛剤を処方してもらった。
院内薬局があるのだろうか、薬代だけですんだ。数百円だったよ。ラッキー。
ところで副反応は3回目が一番キツかった。
左腕に打ったのだが、左腕の肘から上と左半身のあちこち、肩やら腰やらに筋肉痛のような痛みがあった。打った日の夜が一番キツかったかな。
痛みと熱っぽさと倦怠感は翌日いっぱい続いた。薬をもらっておいたのは正解だった。