状況が変わってもひきこもりは変わらない

金太郎飴な会社員

自慢にはまったくならないが、わたしは基本的にひきこもり生活を送っている。
長く会社員をしていたが、会社と自宅との往復を繰り返すという、金太郎飴のようなというか、判で押したようなというか、そんな毎日だった。

会社員ならアフターファイブ(死語か?)に精を出すだろうと思われるかもしれないが、人によるというものだ。
会社勤めをしていればつきあいの飲み会がつきものだが、わたしはこれがあまり得意ではなかった。

新年会とか忘年会とか歓送迎会とか、出ないわけにはいかんだろうという最低限のものには参加していたが、それも一次会のみで帰るというのがデフォだった。

二次会に流れていく同僚たちの波からいかにさりげなく離れるかに苦心したものだ。
飲み会が楽しめないわけではけしてない。わたしなりに酒席を楽しんではいた。

しかし始まって1時間経過する頃にはもう充分と思ってしまうのだ。1時間半も経ってしまえば早く終わらないかなあ、とか考えている。
ああ、早く家に帰りたい。化粧を落としてお風呂に入ってやらなきゃいけない最低限のことをさっさと済ませてしまってだらだらしたい、本を読みたい。
飲み会の終盤はそんなことばかり考えていた。

お酒も弱いんです

そんな風だから用事がない限りは仕事が終わればさっさと帰るし、つきあいは悪い。
平日がそうなら休日には活動しているのかといえばそんなことはない。

スーパーでまとめ買いをしたり、週末のまとめ家事(といっても適当)をしたりということを済ませてしまえば、あとは寝だめしたり本を読んだり本を読んだりだ。

用事はないけど外出する、ちょっとぶらぶらする、という文字はわたしの辞書にはない。
近所のおしゃれなカフェにお茶しに行こう、という願望もあるにはあるのだが、実行に移すことはほぼない。

土日のうち、用事は極力片方にしか入れないようにしていた。もう片方は部屋から一歩も出ないひきこもりの日だ。お楽しみは後に取っておくタイプなので、日曜をひきこもりの日にすることがほとんどだった。

休日なにをしてたの、と同僚に聞かれても、いやなにも、としか答えることができない。
わたしなりに満足できる休日の過ごしかたをしているのだが、しかし根が小心者なので「あんな生活で沖端はなにが楽しくて生きているのか」と人に思われているんじゃないかと気にしたりもしていた。

でもしかたないだろう、とわたしは自分にいいわけをしていた。平日は仕事で疲れているのだ。休日くらいはだらだらと部屋で過ごしてもいいじゃないか、と。

退職すれば変わると思ったが

ところで現在だが、少しばかりわけあって、わたしは長く勤めた会社を早期退職した。
その後は短時間の仕事をするというセミリタイア生活だ。

会社員時代に比べて使える時間は格段に増えたし、休日も増えた。(収入についてはまあお察しということで)
セミリタイア生活に入った頃、わたしは思っていた。ひきこもりが好きなわたしでも、使える時間が増えたら変わるかもしれないと。

会社員の頃は年末年始やGWも実家に行くくらいで残りの日数は部屋にひきこもっていたが、休日が増えたらひきこもってばかりにも飽きるのではないかと。さすがに外に出ることが増えるのではないかと。

セミリタイア生活を送るようになって数年、どうなったかといえば。
結論からいえばひきこもりはやはり状況が変わってもひきこもりだった。

時間や休日が増えた分、部屋にいる時間が長くなっただけだ。
用事がない限り外出しないのは会社員の頃と同じだ。なんなら会社員の頃のほうが家事は丁寧にやっていた。

うん、変わらないね

たとえばアリバイを聞かれたら

話は変わるが、わたしは本を読むのが好きなのだが、特にミステリを好んで読んでいる。
ミステリだと当然事件が起こる。大抵は何件も起こる。そうなると登場人物がアリバイを聞かれることになる。

「○月○日の○時頃と×日の×時頃、あなたはどこでなにをしていましたか」
そうすると聞かれたほうは
「○日の○時なら○○にいました。×日の×時は××です」
答えるとさらに聞かれる。
「それを証明できる人はいますか」

わたしは我が身を振り返ってみる。もしもわたしがアリバイを聞かれたら、わたしは不在証明をすることができるだろうか。
「その日は部屋にいました。外出はしていません。一人暮らしなので証明する人はいません。○日も×日もついでにおとといも昨日もそうです。先週も一ヶ月前もそうです」

なんということでしょう。わたしには不在証明はできないではありませんか。
とりあえず事件に巻きこまれないように気をつけよう。