
教師に平手打ちをされた日

それはわたしの怒りの記憶
あなたは教師に平手打ちをされたことがありますか。
わたしはあります。
あれはわたしが高校生のときでしたね。
当時は教師が生徒を叩くなんてさほど珍しいことでもなかったんですよ。
先生に叩かれたと親に言ったところで、叩かれるようなことをするおまえが悪いと言われるような頃でした。
とはいえ自分でいうのもなんですが、地味っ子でおとなしくて教室の隅の机でひたすら本を読んでいるようなわたしが、そうそう教師に平手をくらうような真似をするはずがありません。これにはサダコが出てきた井戸よりも深い(かもしれない)事情があるんですよ。
おや、気になりますか。そうですか、気になりますか。
では聞いてください。当時のわたしの怒りの記憶を。
それは体育の時間の出来事だった
あれは体育の時間でした。
バスケットボールの授業をしていたんです。
体育の教師は40代ほどの男性教師でしたね。
まずは教師が模範プレイをするということで、わたしたち生徒は、コートの外に体育座りをして教師のプレイを見ていました。
不幸なことに、わたしの隣に派手っ子グループが座っていたんですね。
いまならカースト上位とでもいうんですかね。その当時はヤンキーとしかいってませんでしたが。
ヤンキーでもなかったかな、つっぱり? この単語って通じます?
パーマをかけたりメイクをしたり、体操着ですら着崩したりという華やかな人たちです。わたしとは違う価値観の人たちですね。
派手っ子グループの人たちは、教師が模範プレイをしている間も夢中になっておしゃべりをしていました。
教師のプレイなど見ていないことは丸わかりです。
横で騒がれるものだから、うるさいなあ、と思っていました。
残念ながら注意する度胸はまったくないヘタれですので、なにも言いませんでしたけど。
だけどあまりにもうるさかったんでしょうね。
男性教師がプレイするのを突然やめたんです。
「なに騒いでるんだ、そこ!」と怒鳴りました。
派手っ子グループの人たちがびくりと体を震わせ、一気に静かになりました。
突然教師が怒鳴ったので、わたしもびっくりしました。
ビンタは続くよここまでも
男性教師はつかつかと歩み寄ってきて、騒いでいたグループの端の女子生徒から、次々と平手打ちをしていったんです。
5人だったか6人だったかのグループの、わたしとは逆端の生徒から、平手打ちをかまされていきます。
男性教師は、騒ぐな、とか、静かにしろ、とか言いながらひとりずつ平手打ちをしていきます。
ぱん、ぱん、という破裂音が段々近づいてきます。
うわー、平手打ちされているよ、とわたしはおののきました。
勢いでも余ったんでしょうか、派手っ子グループはわたしの隣までだったんですが、うるさい、とかなんとか言いながら、男性教師はわたしの頬も平手打ちしました。
ぱん、と自分の頬で破裂音がしました。痛みよりも衝撃のほうが大きかった気がします。
え、わたし? ってな感じですよ。
わたしまでぶちました?
父さんにもぶたれたことないのに、と、驚きのあまりアムロの名セリフが出てきましたが、そんなことを言っている場合ではありません。
怒りの消化のしかたは

きちんと確認しやがれです
ぐりぐりパーマやメイクの派手っ子たちと、にきびのドすっぴん顔で黒髪ストレートのわたしとどこに共通項があるように見えたんでしょうか。
平手打ちするならするで、もっときちんと確認しやがれ、この脳筋野郎!
と、いまならこれくらいは言えるかもしれませんが。
勘違いで叩かれてとても悔しかったですけどねえ、なんせ当時はおとなしい女子高生ですからね。教師に反抗することも訂正を求めることもできませんでした。
叩かれた派手っ子グループの子たちは、頬を手で押さえたり泣いたりしていましたけど、わたしは泣くのも悔しかったですね。
恨めしげに教師を睨み上げるくらいしかできませんでした。
どうせなら、髪の毛を一筋唇に挟むくらいすればよかったですかね。「エコエコアザラク」と呟けばもっとよかったかもしれません。
えーと、なにを言おうとしたんでしたっけ。
そうそう、その出来事からン十年経つわけですが、今もってこんなにも鮮明に思い出すことができるのは、別にわたしが根に持つ性格だからというわけではないんですよ、たぶん。
そのとき感じた怒りをうまく消化することができなかったので、心の奥に澱のように溜まってしまったからではないかと思うのです。
暗い感情は随時消化していくほうがいいですね。
精神衛生上もよくありませんしね。
どうしても消化できなくて、後々になってもよろしくない感情に苦しむときは、こんな風に文字にして昇華するという手もありますよ。
消化できないときは昇華です。ネタにもなりますしね。
おお、なんとかまとまりましたね、よかった。