
こんな夢を見る

妙な夢を見るんだ
妙な夢を見るのはいまに始まったことではない。
一人暮らしを始めたとき、友人がわたしに言った。
ずっと実家にいたから、一人暮らしはきっと寂しいよ。あまり部屋にいずに出かけるようになるよ、と。
一人暮らしが思ったより性格に合っていたのか、それとも出不精が勝っていたのか、部屋にひとりでいるのが辛いと感じることはほぼない。
休日には出かける用事がないかぎり部屋に籠もっている。
趣味がすべてインドアだからこうなってしまうのは当然ともいえる。
寂しいと感じることはさほどないが、無意識下では違うのか、ソファでうたた寝しているときに実家では見ることのなかった夢を見るようになった。
ああ自分はひとりだ、と感じている夢だ。それが悲しいのか、ただの実感なのかはよくわからない。
目が覚めたときには、目覚める寸前に感じていた、冷たい水を含んだような気持ちは消えている。
夢に変化が表れた

夢の中の自分が眠っている夢?
同じような夢を何度も見たが、ここのところその夢に変化が表れてきた。
なぜかいつもソファで寝ているときにそんな夢を見る。
それは部屋にわたしの知らない誰かがいる夢だ。
そのときもソファでうたた寝をしていて、夢を見ていた。夢を見ながら、ああ自分はいま夢を見ているんだな、とわかっている。
枕元に誰かが座っている。体育座りをしているようだ。
わたしが使っているソファは足がないタイプなので、高さはクッションの分しかない。
『枕元の誰か』はすぐ近くにいた。
わたしはそれが小さな男の子であることがわかっている。
男の子は、寝ているわたしの顔を覗きこんでいる。
よく寝てるな、と男の子は言う。
投げ出しているわたしの手を、そっとその子は掴んでくる。
温かい、小さな指の感触がある。
握り返すこともないわたしの手を、少年はずっと掴んでいる。
夢の中の少年は
ふっと目を開ける。夢から覚めるのかは自分でもわからない。
夢から覚めた、という夢をよく見るからだ。
部屋の端に置いているソファからだと、まず目に入るのは天井と、部屋の逆端にあるロフトの柵だ。
ああここは自分の部屋だ、と思う。ならこれは夢から覚めたという夢ではなくて、本当に夢から覚めたのか。
ああ、だけど、すごく眠い。まだ眠くてたまらない。まぶたが重いよ。
眠いなら眠ればいいんだ。
ふと枕元を見上げたが、誰もいない。
まぶたを閉じる。
よく寝てるな、と少年が言う。
飽きもせずに、少年はわたしの投げ出された手を握っている。
少年の指の感触に、ふと思いついて、わたしは少年の手を掴んだ。
掴んだままぐいと引き寄せると、少年は小さく声を上げてわたしの腕の中に抱き寄せられた。
わたしはぽんぽんと少年の背を叩く。
「みゅう、いいこだね。どうした、眠れないの?」
みゅうとは、わたしが愛してやまないオスのトラ猫の名前だ。
ぽんぽんと背中を叩かれていた少年が飛び起きる。
「僕は猫じゃないよ」
少年の姿が消える。
わたしは今度こそ本当に目を覚ました。
いつものうたた寝から覚めたときとは違い、自分が愉快な気分になっていることに気づいた。
なんだかおもしろい夢を見たよ。