
読書好きの乱読派です
時間があれば本やら電子書籍やらを読んでいるが、読んでいる本の半分はライトノベルだ。
わりあい乱読派なので、ライトノベル以外にもミステリーやノンフィクションやビジネスものなども読む。
マンガだってもちろん読む。というか、学生の頃はマンガを読んでいたことが多かった。
今でもマンガが好きで、コミックを買う。
購読しているマンガ雑誌に、デビューした頃から好きなマンガ家の方が描いているのだが、その方はマンガ家生活がン十年になるそうで、もうそんなになるのかとしみじみした。
思えばこの方はデビュー作が当時としては異色だった。
少女向けのマンガ雑誌だったが、主人公が20才オーバー、相手役は30才オーバー(たぶん)という設定だ。
メインキャストの年齢設定や職業も、ストーリーもその頃は珍しいものだったと思う。
デビュー作のシリーズは今でも発表され続けているので、その方のシリーズへの愛情がわかろうというものだ。
マンガを夢中で読んでいた

発売日を楽しみにしていたマンガ雑誌
わたしはそのマンガを夢中になって読んでいたが、わたしの上の姉も同じマンガが大好きだった。
子どもの頃はマンガ雑誌は上の姉が買っていたので、わたしは姉が読み終えるのを今か今かと待っていた。
上の姉とケンカをするとマンガを貸してもらえなくなるのが辛かった。
マンガ雑誌の発売日が近くなると上の姉を怒らせないようにしようと気をつけていたのを思い出す。子どもは子どもでなにかと大変なのだよ。
さて、待ちに待ったマンガ雑誌の発売日、上の姉が読み終えた雑誌を、わたしはわくわくしながら開いた。
わたしはすぐに読み始めたマンガに熱中した。
その頃住んでいた古い家は狭く、わたしは個室を持っていなかったので、マンガ雑誌を読んでいたのは茶の間だ。
茶の間の炬燵には家族が全員集まっていた。
その日は家には家族以外に、近所のおじさんが数人来ていた。
たぶん両親とわいわい話していたと思うのだが、わたしは大人の会話にはまったく興味がなかったので、うるさいなー、と思いながらマンガを読んでいた。
寒いので、炬燵から出て他の部屋へ行くという選択肢はない。
おじさんにマンガ雑誌を持っていかれる
いよいよ大好きなマンガのページになった。わたしは目の前に繰り広げられるストーリーに集中していて、周囲の大人の話などほとんど聞こえていなかった。
わたしは気づいていなかったが、家に来ていたおじさんのひとりが、家の電話でどこかへ連絡していたようだ。(時代なので黒電話だ)
おじさんの声がだんだんと大きくなってきて、ふとその声が耳に届いた。
今から思えば、嫌な予感、というものかもしれない。
「え、電話番号ば言うと? ちょっと待ってメモするけん。えーとメモメモ」
受話器を持ったおじさんは周囲を見回し、わたしに目を留めた。
正確には、わたしが読んでいたマンガ雑誌に目を留めた。
「ちょっとそれ貸して」
セリフと同時に雑誌を横から取られた。ひったくられるような勢いに、え、とわたしは呆気にとられる。
あ、紙ここにあるから、と上の姉が慌てて言ったように思うが、おじさんは、ふんふん、とかなんとか相槌を打ちながら雑誌にボールペンを走らせた。
数分後、はい、とおじさんはマンガ雑誌をわたしに返した。

主人公の顔の上にボールペン書きが!
いや、はいじゃねーわ。
わたしが大好きなマンガの、わたしが大好きな主人公の顔の上に、おじさんがボールペンで殴り書きした電話番号が書かれている。
なんてことしてくれやがるんだ、おっさん、と子どものわたしは怒りに震えた。
一瞬後、は、と我に返る。
このマンガ雑誌は上の姉のものだ。
そして上の姉もわたしと同じくらい、いやわたし以上に、この作品が、この主人公が大好きだ。
炬燵の、わたしが座っている斜め前の位置に上の姉が座っている。
その方向から『おまえがそんなところで雑誌を読んでいるからだ』的な視線がびしばしと飛んでくる気配がするのは気のせいではあるまい。
わたしはマンガ雑誌に視線を落としたまま、顔を上げることができない。
あのときにわたしを襲った感情は、焦燥だったのか、それとも絶望だったのか。
その後、上の姉にどんな目に遭わされ、げほごほっ、どんなやりとりをしたのか、どうしても思い出すことができない。