自意識と羞恥心のはざまの出来事

怒りで震える女性

中学生の頃の話

一応受験生なんだよ

わたしが中学3年生のときに、実家は建てられた。まあ受験生だったわけだが、あのころに起こったあれこれについては『それはわたし編』の『あれは受験日の前日のことだった』などをお読みいただければ嬉しく思う。宣伝でした。

家を建築中は、それまで住んでいた古い家を利用した仮住まいに住んでいた。仮住まいは古い家よりもなお狭く、今風にいうなら1DKというところだ。
家族が生活する部屋がひとつと、あとは台所しかなかった。

仮住まいの隣に家を建てていたので、騒音は大きいし、仮住まいにはしょっちょう大工さんやらなにやらが出入りしていた。
『雑に扱われた受験生コンテスト』にエントリーしたら、けっこういいところまでいくのではないかと思う。

さて、これはその頃に起きた話。
なんせ仮住まいなので、玄関などという立派なものはなく、入り口を開けると、家族が生活している部屋が丸見えになるという、ワンルームもびっくりの状態だった。
あの入り口にはカギはあったのだろうか?

わたしは着替えの真っ最中だったよ

ある日の学校帰りのことだった。家にはわたし以外には誰もいなかった。
制服から部屋着に着替えようと、タンスの前で着替えをしていた。
当然ながら、着替えているわたしのいる場所から仮住まいの入り口はよく見えた。

セーラー服の上着を脱いで下着一枚になったときだった
なにやら外から挨拶めいた言葉が聞こえたかと思うと、返事もしないうちに、仮住まいの入り口ががらりと開かれた。

入り口から顔を出したのは、大工さんのひとりだった。その頃30代の半ばくらいだったろうか。
今のわたしから見たら、毎日頑張ってるあんちゃんだね、偉いぞ、なのだが、当時の自分にしてみればよく知らない大人の男だ。

下はスカートを履いていたが、上はセーラー服を脱いで下着姿になっていたわたしは、相当慌てた。
なんで返事もしていないのに勝手に開けるの、このおじさん、とプチパニックだ。
タンスから出していた部屋着を着るひまもない。慌てて脱いだばかりのセーラー服を胸元にあてた。

入り口から顔を出したおじさん、というのかあんちゃんは、部屋の中をぐるりと見回した。もちろんセーラー服を脱ぎかけのわたしの姿も丸見えだ。
そのときのわたしの予想では、着替え中に邪魔したことに気づいたあんちゃんは驚き、詫びの言葉と共に入り口を閉めるはずだった。

だがしかし、予想に反してあんちゃんはわたしに目を留めたままで言った。
「お父さんかお母さんは?」
脱いだセーラー服を胸元にあてたわたしの姿をじっと見たままだ。
「……今はいないです」

答えたわたしの声はどんな響きを持っていたのだろう。
なんせ中学3年生だ。自意識と羞恥心はマックスレベルに高い時期だ。
ふーん、とかなんとか言いながら、あんちゃんは台所のほうへ首を伸ばしている。
本当にわたし以外に誰もいないのか確かめているようだ。

わたしが呪いをかけた日

呪われるがいい!

このおじさんは変態なのか、それとももっと危ない人なのか、と本気でわたしは怯えた。
わたしはしゃがんでセーラー服で上半身を隠した姿のまま、身動きもできないでいた。
やがてわたし以外に誰もいないと知ったあんちゃんは、んじゃ、おじゃましました、とかなんとか言いながら入り口を閉めて去って行った。

いやわかるんだよ。今ならわかるよ。
30半ばの男からしてみたら、成長の遅い(ほっとけや)中学生が着替えをしているなんて、ワカメちゃんが着替えているのとさほど変わらないのだろうと。

ワカメちゃんの下着姿を見てもなんとも思わない。それで興奮するようならそっちのほうが余計に恐い。
あんちゃんにとっては、子どもが着替えていたって? そうだっけ? くらいのことなのだろう。
だが言わせてくれ。

これだから、これだから田舎のおっさんは!
あんちゃんには、自分の娘の着替えをうっかり覗いてしまい、娘に毛虫のように嫌われたあげくにたっぷり1年は口をきいてもらえないという呪いをかけておこう。エコエコアザラク!

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