
自転車を走らせていると
実家に住んでいた頃は、移動用の足は車だった。とはいえ、車で遠出をした記憶はほぼない。もっぱら最寄り駅から実家まで往復する通勤用だ。
駅近くに部屋を借りてからは、移動の足は自転車に変わった。車とは維持費用が比較にならないくらいお安いのでとても助かる。
自転車を走らせていると、あたりまえだが他の自転車と行き合うことがある。
わたしは左側を走っているのだが、なぜか正面から自転車がやってくる。交通法規はどうした。
正面からやってくる自転車はおおよそ2種類の走りに分けられる。
猛スピードで飛ばしてくるか、運転者が手元のスマホを見ながら蛇行しているかだ。
両方ともおっかない。蛇行自転車はこちらの存在を認識していないだけに次の行動が読めずになおおっかない。わたしはひやひやしながら、なんなら一度停止してすれ違う。
すれ違うならまだ自分からは相手の姿が見えているだけいいともいえる。
なんせ自転車はあまり音がしない。
後方から猛スピードで追い越していかれるのもこれはこれでかなり恐い。
ときどき歩道を歩いているときに後方から走ってきた自転車が追い越していくことがある。
いつだったか、風にあおられて乱れた髪を直そうと上げた肘のすれすれを自転車が走り抜けていったことがあってぎょっとした。
なぜ若人の漕ぐ自転車はあんなにスピードが出るんだろう。
昔はわたしも飛ばしていた
高校生のときは、通学は自転車だった。高校までの距離がけっこうあったので、片道40分ほどはかかっただろうか。
若くて体力はあるし急いでいるしで、あまり自覚はなかったが、その頃はわたし自身もけっこう飛ばしていたのではなかったかと思う。
3者面談かなにかのときに、母と一緒に学校へ行ったことがある。母は車の免許を持っていないので、2人で自転車を漕いで学校へ向かった。
最初は母に合わせて自転車のスピードを落としているのだが、次第に普段のスピードに戻っていく。とすると、母がわたしについてくることができなくなって「ちょっと待って、スピードを落として」と言ってくる。
いけないいけない、とスピードを落とすのだが、しばらく走るとまた普段のスピードに戻ってしまう。
何回スピードを落としてって言っても速く走る、と母からはずいぶん文句を言われた。
ごめんよ、母よ。体力だけはあるお年頃だったんだよ。
母の電動自転車
母はずっと自転車に乗っていたが、年齢と共に普通の自転車に乗るのが辛くなったのか、ある年から電動自転車に乗るようになった。
思い切った買い物だったようだが、楽に自転車を漕ぐことができると喜んでいた。
後年は、体の都合もあって電動自転車にも乗らなくなった。
わたしの移動手段が自転車になった頃に、母から自分の電動自転車を持っていっていいといわれたが、あれはあれで充電が面倒そうだし、うっかり集合住宅の駐輪場に置いていたらトラブルになりそうだしで、まだいいと断ってしまった。
わたしが今使っている自転車が盗難などのトラブルに遭わないのは、ブレーキをかけると耳障りな甲高い音を立てる、かなり年期の入ったシロモノだからだというのもあると思う。
あの電動自転車はまだ実家にあるんだったっけか?
わたしが住んでいる集合住宅から実家までは自転車で片道30分強くらいだ。
この距離を漕ぐのが辛いと感じるようになったら、改めて母に電動自転車を譲ってくれと言ってみようか。
妙なところで気前のいい母が、それまでに誰かに電動自転車を譲ってしまわないといいけれど。
後日談
この文章を書いた後で実家に確認したら、予想通りというか、母はとっくに知人に電動自転車を譲っていた。
やっぱりか。
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