
友人カナのこと
前に友人カナの話を書いた。黙って立っていれば美人なカナだが、彼女はそうしない。立っていずに、夜中にサダコになってクモ歩きをする。
このあたりの話が気になる方は、ぜひ「サダコがきっとくる」をお読みいただければと思う。宣伝でした。
だがしかし、カナの見た目に騙される(と書くと聞こえが悪いな。自分の理想を反映させてしまう?)男子も当然存在する。
これはまだわたしもカナも小娘だった頃の話だ。
仲間うちでわいわいやっていた時、カナに想いを寄せる男子がいるという話になった。
ラブレターでも貰ったのかと思いきや、そういうわけではないようだ。
仲間うちでカナと一番つきあいの長い友人がいるのだが、その友人に、なぜか男子がマウントを取ってきたらしい。
俺のほうがカナさんのことを良く知っている、と。
へー、と友人は思ったらしいが、くだんの男子はなおも言葉を続けたという。
なぜかマウントを取ってくる男子

え、マウント取っちゃう?
いわく、
『カナさんの瞳には悲しみが浮かんでいる』
『カナさんは助けを求めているんだ、俺にはわかる』
『俺がカナさんに手を差し伸べる』
男子がドヤ顔で語る言葉を、友人は(鼻で)笑って聞いていたらしいが、その話を聞いたわたしたちは沈黙だ。
それ、ヤバい人じゃないの?
その男子はイラストを描くのが好きだったらしいが、スケッチブックいっぱいにカナの絵が描かれていたらしい。
カナもさすがにそのスケッチブックを見たときは引いたらしいが、こっちはもっとドン引きですがな。
仲間うちでカナへの恋心を晒してすまんのう、と申し訳なく思っていた気持ちが吹っ飛んじゃいましたよ。
沈黙の後で誰かがカナに聞いた。わたしだったかもしれない。
「カナ、助けを求めてるの?」
カナは真顔で答える。
「え、誰に? なんのために?」
……だよねえ。
しかし悲しみを浮かべた瞳か。リアルで聞くとすごいパワーだな。倒れそうだ。
ストレートの黒髪を腰まで流したカナは、一見淑やかに見えないこともない美人だ。
『瞳に悲しみを浮かべて助けを求めている』ように見たい気持ちもわからないではないが。
だがしかし、キミ(誰か知らんが)はあまりにもカナのことを知らない。
カナの別の顔を教えてあげよう
ここでわたしが知るカナエピソードを少しばかり進呈しよう。
ある日数人で街を歩いているとき、ベビーカーを押したお母さんとすれ違った。
ベビーカーには丸々とした赤ん坊が乗っている。
かわいいねえ、とすれ違いながらわたしたちは言った。
カナだけは違うことを言った。
「ふふっ、美味しそう」
わかったから、よだれを拭う仕草をするのはやめなさい。本気に思えて恐いから。
またある日のこと、子どもの頃の思い出話になった。
小さい頃のカナか。きっと、ランドセルのCMに出てくるような可愛い子どもだったんだろう。
カナは蛙が嫌いだったらしい。蛙が苦手な女の子は多いだろうし、なんの不思議もない。
だがカナは続ける。
「だから蛙を綺麗に生まれ変わらせてあげようと思って」

ひ、ひぃぃ……
思って、それで?
「蛙のお腹を切って、花びらを詰めてみた」
ひいぃぃ。
「わたしなりのロマンチシズムだったんだけど」
ロマンチシズムって書いて、猟奇って読むんでしたっけ?
「同じことをミミズにも思ったんだけど」
思っちゃったんですか。
「ミミズをいっぱい集めて、食器用洗剤で洗って乾かしたの」
そ、それで?
「ミミズの一夜干しができてた」
見た目詐欺、見た目詐欺だよ、この人!
キミ(だから誰だ)惑わされてるよ!