たまらなく痒いんです

かゆいワンコ

痒い。とても痒い

痒い、痒いよお

九州の夏は暑い。九州以外の夏はよく知らないけど。
それは暑さのピークがようやく過ぎたかという頃だった。

肌のあちこちがやたらと痒くなってきた。
膝の裏とか、肘の内側とか、足のつけ根とか。
肌の薄い部分ばかりが痒い。
原因は乾燥かそれともあせもか。

うう、痒い。
一番痒いのは腰と尻だ。尻が痒い。痒いったら痒い。
気づけばばりばりと臀部をかいている。その姿は確実に色気とは百万光年かけ離れている。ある日ふと不安になって、わたしは尻を鏡に映してみた。

こんなに毎日かきむしっているのだ。尻の皮膚がぼろぼろになっているんじゃないかと不安になったのだ。
鏡に映った尻を見て、うお、と息をのんだ。

生まれたときの我が臀部はこんなであったろうか。
かつての自分に思いをはせるほど、尻には青紫のでかいアザができている。
これは、蒙古斑、ではなくて、かきむしりすぎての内出血?

うーむ、まさかこんな状態になっていようとは。
観念して皮膚科に診察に行くべきだろうか。

いやしかし、医者の前とはいえ、尻をむき出しにすることにためらいがある。あるったらある。
尻をむき出しにして医者の前にさらしたあげく、これはあせもですね、塗り薬出しておきましょう、なんぞとあっさり言われた日には毛布を被って泣いてしまう。

なんとか自力で事態を好転させることはできないものか。
わたしは全身にボディクリーム(アロエ)を塗りたくった。乾燥が原因と踏んだからだ。風呂上がりにむきになってクリームを塗りたくったおかげで、肌はしっとりになってきた。しかし尻の痒みはなかなか治まらない。

母に愚痴ってみた

「乾燥のせいか肌が痒い」
実家へ行ったときに母に愚痴ってみた。

母相手とはいえ、痒いのは尻だ、とは言いがたい。
いいのがある、と母は薬ボックスを取り出した。

父と母が病院からもらっている薬が小山のように収まっているボックスから、これ持っていきなさい、と母は薬を取り出した。
小指サイズのチューブ入りの薬だ。

「なんの薬?」
「痒み止め。父さんが病院からもらってきたやつ。いくつかあるから」
見ると、同じチューブが3本も4本もある。

親とはいえ、人が病院からもらった薬を受け取るわけにはいかないだろう。それに、医療費がどれだけ国の予算を圧迫していると思っているんだ。いらない薬なら、溜めこまずに病院からもらうのを断りなさい。

えーと、これくらい建前を言っておけば大丈夫でしょうか。
わたしはありがたく父の痒み止めをもらって帰った。

母のアドバイスどおりに薬を塗りこんだ

母よ……

よく塗りこみなさい、という母のアドバイスに従い、わたしは風呂上がりにせっせと痒み止めを尻に塗りこんだ。
その痒み止めはよく効いた、ような気がした。
塗るとしばらくの間は痒みが治まる、ような気がした。

なんせひっきりなしに痒くなるので、わたしは会社へもその痒み止めを持っていった。
トイレタイムは痒み止め塗りこみタイムだ。

あんまり頻繁に塗っているものだから、わたしはちょっと心配になってきた。
もしかしてこの薬がものすごく強い薬だったらどうしよう。

塗布するのは1日○回までとか、1回塗ったら次に塗るまでは数時間空けないといけないとか、なにかお決まりがあるかもしれない。
塗りすぎて肌がかぶれて症状悪化とかしゃれにならない。

かなりいまさらだったが、わたしは母からもらった痒み止めの効能や副作用を調べるべく、チューブに書かれた薬品名をググってみた。
まあそうしたら。なんということでしょう。

水虫の薬じゃねーか!

痒みの領分が違うわ!
わたしの臀部が痒い原因は白癬菌じゃない! はずだ。

これまで母のうっかりと勘違いで何度も痛い目にあってきたというのに、なぜ学習しないんだ、自分。
がっくりとうなだれながら、残り4分の1まで使いこんだ痒み止めを、わたしはその日、ゴミ箱に放りこんだ。

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