
それは健康診断でのできごとだった
会社員でよかったと思っていたことのひとつに、毎年、あるいは年に2回の健康診断の受診があった。
放っておいても、会社が健康診断を受ける手続きをしてくれるのだ。
なんとありがたい。そんなことでもなければ、めんどくさがりのわたしが健康診断など受けるわけがない。
ちなみにわたしの母は病気が見つかるのが嫌だという理由で健康診断を受けようとしない。
健康診断の存在価値を根底から否定していると思う。
それはともかくとして、わたしはその日、半年ぶりの健康診断を受けていた。就業時間中に会社の費用で健康診断が受けられるなんて、会社員ってときどきいいなあ。
衝撃は突然に
視力を計ったり聴力を計ったり、いつもの手順通りだったのだが、身長を計ったときにその悲劇は襲ってきた。
最近の計測器は進んでいるものだ。身長を測る器械で自動的に体重も計測できてしまう。計測が終わると器械から用紙がプリントアウトされてくる。
感じのいいスタッフのお姉さんが笑顔でプリントアウトされた用紙を指し示す。
「数字にお変わりありませんか?」
「……お変わりあります」
わたしは呆然と呟いていた。
その頃、わたしの家に体重計はなかった。
前回体重を測ったのは健康診断を受けた半年前だ。
わたしの記憶に間違いがないなら、そのときから2.5キロ増えている。
半年で2.5キロ?
半年で?
いや待て。半年前に受診したとき、たしかわたしは、前回より2キロ以上増えているわ、がーん、とか思ったのではなかったか?
そうするとわたしは1年で5キロ増えたことになるのか?
や、やばい、さすがにこれはいくらなんでもやばいのでは……。
そのときのわたしがどんな表情をしていたのか、スタッフのお姉さんは、
「もう一度測ってみましょう」と言った。
いやいいです、と辞退したのだが、数字が違って表示されることもありますから、とさらに勧めてくれる。
そ、そうですか、とわたしは一縷の望みにかけた。
促されるままもう一度計測器の上へ。
「あら、数字変わりませんねえ」
そうですよねえ……。

体重計の数字が……
とりあえず計測から始めてみよう
いったいなにがいけなかったのだろう。
自慢ではないがわたしはさほど肉を食べない。どちらかといえば草食系なのだ。
1日頑張った自分へのご褒美といいつつ寝る前に食べているアイスやチョコのせいか。
それとも甘いもの食べたら次はこれだよね、といいつつむさぼっているスナック菓子のせいか。
はたまた休日といったらカウチポテト(死語)と決め込んでいるせいなのか。
うーむ、どれが原因かわからない。
体重数値のショックが大きくて、その後は流されるように検査を受けた。
その日、わたしは密林でタ○タの体重計を購入した。
体脂肪やBMIも測ることができるすぐれものだ。
友人は毎日グラフをつければダイエットに効果的だという。
さすがにそれはめんどうだろう。
いやいや、そんなことをいってる場合じゃない。
この腹はやばい。あまりにもやばすぎる。
とりあえず毎日体重を測るところから始めてみよう。
体重を計る、イコールダイエットでは決してないことを、まだこのときのわたしは知らない。

計っただけでなんかやった気になるよね