
健康診断を受けた話
会社を退職してから健康保険は国保になっている。国保になってから年に1回、住んでいる市から健康診断の案内が届く。国保特定健診というやつだ。
お得な金額で受診することができるし、ありがたいことなので、毎年近くの病院で受けている。退職した最初の年はうっかりこれを受けずに済ませてしまって、案内が何度か届くしなぜ受けなかったのか理由を教えてくれとかの書類も届いてちょっと面倒、げほげほっ、いやいや、ありがたいことです。本当に思っています。
というわけで今年も受けてきたわけだ。
毎年夏頃に受けていたのだが、今回は11月までひっぱった。なぜか、体重が落ちなかったからだ。正確にいうなら、一度は落ちた体重が見事に元に戻ったからだ。
わたしは忘れていない。あれは前年の受診時のこと。
医師から言われたのだ。これ以上体重を増やさないようにと。
わたしは思った。ならば落としてみせましょう体重を、と。
その思いは一度は叶った。半年かけて4キロちょい落ちたからだ。だがしかし、安心したのもつかの間、ひと夏で元に戻った。
結果として夏が終わった時点で、前年からまったく体重は変わっていないことになった。
去年に比べて落ちていますね、と医師から言われることを楽しみにしていたのに。
ええ頑張りました、と微笑む自分の姿を想像していたのに。
わたしの半年の努力はなんだったのか、ひと夏の油断と怠惰でプラマイゼロだ。というか、マイプラゼロだ。
せめてちょっとくらい体重を落としてから健診を受けたい、と思って11月まで受診をひっぱったのだが、結果としてまったく落ちず、わたしはあきらめて病院へ行った。

プラマイゼロ……
そして病院へ
病院へ行ってわかったのだが、昨年と医師が変わっていた。個人病院(のはず)だが、どうやら院長が交代したようだ。
昨年はちょっと年配の医師だったのに、今年は若い医師に変わっている。世代交代か。
診療開始時間の少し前に病院に着いたのに(予約制じゃなかった)すでに待合室にはけっこうな人数がいた。平日の朝だというのに、たいした人気じゃないですか。
渡された問診票(質問票?)を書き、待合室に置かれたテレビをぼんやりと見ながら待つ。
周囲の人たちも皆テレビを見ているようだ。場所が病院だからか平均年齢が高いからか、スマホをいじっている人はいないようだった。
そのうち名前を呼ばれて、粛々と検査を受ける。
体重を計るときに思った。昨年は着用している服の分として500グラム引いてくれたのだが、今回もそうしてくれるのだろうかと。
家を出るときに普段どおりにジーンズを穿こうとして、これは重いよなとためらい、生地の薄いパンツを穿いていた。カーディガンも薄い生地のものにした。体重計測のために服を選ぶってどうよ、と突っ込む自分もいたがそうしたのだ。
体重計に表示された数字に軽く絶望する。昨日の夕飯前の風呂上がりにマッパで計った数字より700グラム重い。服込みだとしてもこれはどうよ。朝食抜きなのにホントにどうよ。
後でわかったが、今回は服のマイナス分はなく、体重計の数字がそのまま票に書かれていた。頼むから引いてくれ。
いやわたしだってわかっているんだよ。気にするのは体重だけではなかろうと。もっと体の内部的なものを気にしたほうがいいんじゃないか、年齢的にと。
だけど血液検査の結果はすぐにはわからないし、目に見える数字が気になるのはしかたないじゃないか。
葛藤しているうちに最後の医師の問診になった。
若い医師はわたしの体のあちこちをチェックし、胸の音などを聞き、最後に検査の数字(身長体重とか血圧とか腹囲とか)が書かれた票を確認した。
いってはナンだが、格安の健診にしてはえらく丁寧だ。ありがたいことだ。
医師からの言葉は

予想通りの指摘
そして医師は言う。
尿の数字も問題ないですし、特に異常はないですね。
そうですか、よかったです。ちょっと心配だったんですよね、尿の数字あたり。ええ年齢的なものもありますし。
しかし医師は続ける。あえて言うなら、と。
体重をもう少し落としたほうがいいですね。
今BMIの数値がピー(おや笛の音が)ですけど、これが25を超えると肥満ですよ。
あまり猶予はないですね。というか、けっこうぎりぎ、げほげほっ。
でもそれ、服の分もはいってますよね、と喉まで出かかったが、やめた。言っても意味がない気がしたからだ。代わりに
一度は落としたんですけど、戻ったんですよね。
言ってはみたが医師には華麗にスルーされた。これも意味なかったですか、そうですよね。
結果として指摘されたのは体重だけだったという話だ。
薄手の服に11月の風はちょっと冷たかったよ。

