インターホン工事をするとな
ある日、住んでいる集合住宅のポストに封筒が投函されていた。
封筒の表には「インターホン改修工事のご案内」とあった。
中に入っていた用紙を読んでみると、玄関、及び全住戸のインターホンの改修工事を行うことになったらしい。
この集合住宅にはすでに10年以上住んでいるけれど、インターホンの工事は初めてだ。
集合住宅ってこんなこともしなきゃいけないんだね。不動産を持つのも大変だね。
持つ者の苦労に持たざる者が思いを馳せるのはともかくとして。
数日間に分けて行われるらしい工事の、各部屋の工事日程なども決められていて、都合の善し悪しを知らせてほしいとある。
わたしは会社を退職してから短時間の仕事のみのセミリタイア生活を送っているので、予定されている日程で特に問題はなく、「予定通りでいい」で返事をした。
普段より早めに起きなきゃいけないのがちょいアレだが、まあいいだろう。(普段が遅いのだ)工事の所要時間は1時間ていどとな。はいはい。
そして工事の日
早起きしたよ
そして工事の日。わたしはアラームをセットして、普段より少しばかり早起きをした。
パジャマ代わりのへたったTシャツを着ているのもナンだろうと、コンビニへ行けるていどの服に着替える。
予定時間ちょうどに部屋の扉がノックされた。くどいようだが10年以上住んでいるが、扉をノックされたのは初めてだ。
たまたまテレビをつけていなかったのでノックの音が聞こえたが、もしテレビをつけていたら聞こえなかったよ。
なんでノック? インターホンを鳴らせばいいのに。あ、そうか、インターホンの工事だからすでに使えなくなっているのか。
慌てて扉を開ける。
20代半ばらしい青年が黒いTシャツと作業ズボンという格好で立っていた。
沖端さんですか、と聞かれて、はい、と答える。
ではインターホンの工事をします、ということで、道具と荷物を持った青年に部屋の中に入ってもらう。
「工事をする前にブレーカーを落とす必要があります。パソコンなどつけていないですか」
青年に聞かれて、
「パソコンはつけていないです。つけているのはエアコンくらいですね」
答えた次の瞬間にはブレーカーを落とされていた。
おう、早いね。エアコンのリモコンを手に取った瞬間に切れてしまったよ。
青年はさっそく古いインターホンをがりがりとはずし始める。なんせワンルームと1Kの中間のような部屋なので、他に行く場所もなく、わたしも同じ部屋で本など読み始める。
⒌分もしないうちに部屋が暑くなってきた。季節は8月で、この時期の集合住宅はとても暑い。エアコンなしではかなりつらい。
所要時間は1時間だったか。その時間エアコンなしで耐えられるだろうか。
青年は背中を向けたまま、黙々と作業をしている。
エアコンもつけない部屋で、この青年は一日中作業をするのだろうか。仕事とはいえ大変だ。
それにしても、業者の人(業者の人で呼びかたは合っているのか)とはいえ、自分の部屋の中に青年がいるという状況がちょっと落ち着かない。
本を読みつつ、背中を向けている青年をちらりと見る。おお、スタイルがいいね、お兄さん。現場作業をしているからだろうか、Tシャツを着ていてもわかる筋肉のついた体をしている。Tシャツの袖からのぞく腕の形もいい。それでいてゴツくはない。細マッチョというところだろうか。
わたしは相手が背中を向けているのをいいことに、ちらちらと鑑賞、いや違う観察、いやそれもどうなんだ。いや正直にいおう。観察しました。ちょっとだけです。怪しいおばさんと呼ばないでくださると嬉しい。ネタにしたかっただけです、本当です。
新しいインターホンは快適
コンパクトで画像がきれい
そうこうしているうちに新しいインターホンへの付け替えが終わり、もう一人別の業者の人が来て、部屋の扉のインターホンと建物の玄関のインターホンの呼び出しのチェックを行う。
使い方を説明してもらい、説明書をもらって工事は終了した。新しいインターホンは以前のものよりもコンパクトになったようだ。
工事の所要時間は15分か20分ていどだった。
一仕事を終えた青年は爽やかに去って行った。
お疲れさまです、ありがとうございました。
短い時間で済んでよかった、とわたしは速攻エアコンのスイッチを入れた。
後日、初めて新しいインターホンを使う機会があった。
おお、モニターのカラー画像が美しいよ!