
ホラーは苦手なんです
ホラーは苦手だ。だって怖いから。
生来の好奇心が斜めに働いて、ホラー映画だのお化け屋敷だのを見たがるが、中に入った瞬間に後悔する。それはもう何度も後悔した。そろそろ学習しようよ、自分。
というくらいホラーが苦手なのだが、時折ホラーな夢を見ることがある。
ひところはたてつづけに怖い夢を見ていて、夜寝るのが嫌だったくらいだ。
どれくらい怖い夢かというと、怖さをわかちあおうと友人に話すと、それ以上は話すなとストップがかかるくらいだ。
というわけで、今も記憶に残る『沖端朝日が見た怖い夢ベスト3』を発表したいと思う。
その1.トンネルの中で
わたしはトンネルの前にひとりで立っている。
車は入ることができないのではないかと思うくらいの小さなトンネルだ。
トンネルの奥は暗くて、どこまで続くのかわからない。光は見えない。やめればいいのにトンネルの中にわたしは足を踏み入れる。
トンネルの中に入ると、なにかがゆらゆらと揺れているのが見える。
逆U字型に弧を描いているトンネルの壁。その壁一面に人の腕が生えている。
ひじから先を突き出して、それらの腕たちは風に揺れるようにうごめいている。
ひしめきあって、無数の腕が生えている。
ゆらゆらと揺れるたくさんの腕は、まるで手招きをしているようだ。
それらの腕は男性のもののように太かったり、女性のもののように細かったり、子供のもののように小さかったりした。
ゆらゆらと揺れる腕の波のなかをわたしは歩き進める。
と、わたしの腕が壁から生える腕の1本に掴まれた。それを皮切りに、次々とトンネルの壁から生える腕がわたしの腕や足を掴んでくる。
トンネルの中でわたしは身動きできなくなる。
わたしは力を振り絞って自分を拘束する腕たちを振り切ろうとする。手足を振り回し、なんとか拘束する腕たちから逃れると、わたしは一気にトンネルを走り抜けた。
ようやく明るい日の下に戻り、安堵したわたしは自分の体を見下ろして気づいた。
わたしの腕やら足やらを、掴んだままの何本もの腕がぶら下がっていた。

まだまだあるよ、怖い夢!
その2.家の床下で
わたしは子供だった。子供のわたしは1軒の家の床下を覗いている。
実際にはそんな家に心当たりはないが、夢の中では、そこはわたしの古い家の、広い床下だった。
子供のわたしは冒険をするように床下に忍びこむ。
よつんばいで湿った土の上を進んでいった。
進んでいく先に1本の花が咲いていた。白い花は私の目の先でゆらゆらと揺れている。
近づいて見ると、それは花ではなく、人の手だった。手首から先が土から生えている。
風に揺れる花のように、それはわたしを手招きしていた。
招かれるままにわたしは土から生える手に近づいていく。
爪がきれいな赤に塗られているのが見えた。
と、土の中に埋もれていたらしい手首から先の腕がするすると現れてきた。ゆらりとなめらかな動きでそれは腕から先を、頭、胸、体の全身を瞬く間に現した。
床下なのに、どうして大人が立てるほどの高さがあるのか、という疑問は持たなかった。
それまで頭の上にあったはずの床はとうに消えていた。
姿を現したのは女性だった。
ひらひらした服を身に着けていた。ワンピースのように見える。
黒髪が長く垂れている。
女性はじっとわたしを見下ろしている。
でも女性と目が合うことはない。
女性の顔は塗りつぶされたように真っ黒だった。
その3.部屋の天井で
実家の、自分の部屋の自分のベッドで寝ていた。ふと目を開ける。
実際にはごく普通の板張りの天井があるだけなのだが、そのとき見上げた天井には、低い位置に梁が通っていた。
太い梁に、なまけもののように両手足を使って女性がぶらさがっている。
トレーナーとスカートを身に着けている。ぶらさがっているせいで、スカートもトレーナーも下に垂れている。
長い黒髪が、わたしが寝ているベッドに届きそうなくらいにばさりと落ちている。
あごをのけぞらせている女性の顔が、さかさまのままでわたしを見下ろす。
でも女性と目が合うことはない。
女性の顔は塗りつぶされたように真っ黒だった。

怖い、怖いよぉ
ベスト3は惜しくも逃したものの、まだまだ怖い夢はたくさんあります。
書いたら読みます?