
苦労するばかりで何の利益もなく、疲労だけが残るということ ── 新明解故事ことわざ辞典
時代の波に乗れていない

要は面倒くさがりということだ
自慢にはならないが、特に不便がないなら今使っているものを変えようとしないタイプだ。
積極的に変化を求めないとでもいうか。
車の免許を取ったのは30代に入ってからだし(原付で事足りていた)、ガラケーからスマホに変えたのもずいぶん後になってからだ。同僚や友人に早くスマホに変えればいいのにと何度も言われたが、そのたびに「別にガラケーでも困らないから」と言って変えなかった。
時代の流れでようやくスマホに変えたが、まあ変えたら変えたで便利だよね、うん。
操作を覚えるのは大変だったけどね。フリック入力はいまだに遅いし。
というところで、今回の話はネット回線について。
わたしは令和に入ってもなおADSLを使っていた。ええ、ADSLです。
ある大手キャリアに用があって行ったとき、うっかりそのことを話してしまい、その後の光回線の猛プッシュにかなり辟易した。
あまりにも熱心な売りこみが面倒になって、結局本来の用事を済ませることもなく帰ってしまった。
光回線にすると通信速度が速くなるんだろうなあ、とは思っていた。
しかし住んでいるのが集合住宅なので、工事を勝手にしていいのかどうかもわからない。
実家から今の部屋に引っ越しをしたときに、使っていたADSL回線も引っ越しをしたが、実家で使っていたのを一旦解約して集合住宅の部屋で再度契約し直すという手間をかけた。
光回線に変えたらあの手間を繰り返すのかと思い、それも面倒だった。
話は変わるけど、ネット回線を解約するってなぜあんなに面倒なんだろう。そして解約電話の番号ってなぜあんなに繋がりにくいんだろう。
ネット環境を見直そう、と思った
集合住宅に引っ越してから数年経った頃、光回線に申し込もうとしたことがある。
実際に業者の人に部屋まで来てもらった。
業者の人は部屋を見に来て、工事のために外壁に穴を空ける必要があると言った。
さすがにそれをわたしが判断することはできない。だってここ賃貸だし。
管理会社に連絡してみたが、その日は休日だったので電話が繋がらなかった。
穴を空けていいかどうかわからないからということで、結局業者の人には帰ってもらった。
1日予定を開けていたのにパーになったし、業者の人にもわざわざ来てもらったのに申し訳なかった。
令和に入って、諸事情あって仕事をしていない時期があったので時間ができた。
わたしはまだADSLを使っていたが、せっかく時間ができたので、この機会にネット環境を整えようと思った。
ネットでいろいろと光回線について調べた。現在使っている大手キャリアの光回線にするか、それとも別の大手キャリアにするか。
光回線といってもいろいろな種類がある。調べれば調べるほど混乱してくる。
工事不要の光回線というのもあった。これはいいかもしれない。集合住宅だから工事禁止といわれたらこれにしようか。
とりあえずは光回線の工事をしていいかどうかを管理会社に聞いてみよう。
わたしは管理会社に電話をして、応対に出た女性に集合住宅の名前を告げ、光回線を使いたいが勝手に工事をしていいものなのかと聞いてみた。
電話の向こうで、女性がなにかを調べるような気配がある。
やがて女性の、やや困惑した声が聞こえてきた。
『建物名は○○でございますね』
「はい、そうです」
『その建物は、光回線は無料で使えるはずですけど』
……え?
今なんて?
光回線が無料で使えるって言いましたか? わたしは有料で大手キャリアのADSLを使ってますけど?
業者の人とやりとりをした結果

今までわたしがしていたことは一体
「わたしの部屋も光回線が使えるということですか。どうやったら使えますか」とわたしは聞いた。
ネット回線については別の業者に委託しているということで、管理会社からは返事をもらえなかった。
業者の連絡先を教えてもらったので、すぐにそちらに電話した。
建物のネット回線の担当だという人と連絡が取れるのに少々時間がかかった。
担当者の男性に教えてもらったところによると、わたしの住んでいる集合住宅は5年ほど前に建物ごと光回線が使えるようになったそうだ。
ちなみにわたしはもっと前からこの部屋に住んでいる。
どうやったら光回線を使えるようになるのか、と問うわたしに電話の向こうの男性は言った。
『ADSLはルーターを使っていますか』
「はい」
『ルーターに差しこんでいるLANケーブルがありますよね』
「はい」
『一旦パソコンの電源を落としてから、ルーターからLANケーブルを抜いてください』
「はい、電源を落としました。LANケーブルも抜きました」
『壁にコンセントを差し込むパネルがあって、そこにLANケーブルを差し込めるところがあるんですが、わかりますか』
テレビのコンセントを差し込んでいるパネルに、LANケーブルを差し込む箇所もあるのにそのときになって気づいた。
あるよ、LANケーブル用の差し込み口があるよ。
「あ、ケーブル用の、あります」
『じゃあそこにLANケーブルを差し込んでください。そうしたらパソコンを立ち上げてください』
「はい、パソコンを立ち上げました」
『Yahoo!かなにか、ネットに繋げてみてください』
「はい、繋がりました」
『はい、光回線が使えています』
「わ、わーい」
電話越しのやりとりだけで済んでしまったよ。これでいいの?
これで光回線が使えているの?
電話を切った後も、しばし呆然としてしまった。
こんなに簡単に光回線が使えるなんて。
というか、5年も前から光回線が使えるようになっていたのに、なぜわたしはそれを知らなかったの?
(友人たちの意見は、集合住宅からのお知らせを沖端が気づかずにスルーしたんだ、で共通していた。泣いていいですか)
というか、無料で使える光回線が通っていたのに、わたしはそれをわざわざADSLに変換してお金を払って使っていたの?
5年間にかかった通信料金はトータルでいったいいくら?
光回線を使えるようになったのは嬉しい。とても嬉しい。
しかし、なんだろう、背中にのしかかるこの徒労感は。