
運転免許証の話

ペーパードライバーです
わたしは運転免許を取るのが遅かった。30代になってからだ。
根がひきこもりの出不精なので、運転免許を取って車を買ったからといって、いきなりアクティブになるはずもなく。
車に乗るのはほぼ自宅と最寄り駅の往復だ。当時はまだ車にナビは一般的ではなかったし、方向音痴で地理音痴のわたしは、車を買ったからといって特に遠出をするでもなかった。
車に乗るのが好きでもなく、どちらかといえば運転が苦手だったので、結局10年乗っても走行距離はたいしたことはなかったはずだ。たしか2万キロくらいだったか。
駅の近くに部屋を借りて引っ越してからは、車に乗ること自体がなくなった。
数年は車を実家に置きっぱなしにしていたが、それもなんだからと、手放してしまった。
以来、ペーパードライバー歴を更新中だ。
もう恐くて車を運転することはできない。
免許更新だけはしている
が、せっかく頑張って取ったんだからと、免許だけは更新している。
車に乗らないのだから当然だろうが、免許はゴールドだ。
で、なにがいいたいかというと、免許を更新するためには、更新できる場所に行かなければいけない。免許試験場とか、まあそういうところだ。
ところで地元の免許試験場はけっこう不便なところにある。わたしのいう不便とは、公共交通機関で行きにくいところという意味だ。
車で行けばいいじゃん、と人は言う。行ければ苦労はしないんだよ、まったくのところ。
わたしの交通手段に車の文字はない。(人が運転してくれる場合はこの限りではない)
どうしたらいいんだと悩んでいたところが、天は我を見捨てなかった。
ゴールド免許センターというものがある。名前の通り、ゴールド免許の者のみが更新できる場所だ。
この場所が、まあ、なんということでしょう。とても便利なところにある。
福岡の人間ならわかるだろう、天神からも近い渡辺通りだ。
天神のちょい手前の駅で下りたら、わたしでも歩いていくことができる。
直近の免許更新のときも、わたしはそのゴールド免許センターへ行った。
(一応ちょっと心配だったので、最寄り駅で駅員さんに行き方を聞いた。5年前にも行ったことはあるが、そんなものをわたしが覚えているはずがない)
便利な場所にあってありがたいなあ。ゴールド免許である限り、わたしはここを利用させてもらうよ!
利便のいい免許センターの移転

い、移転ですと!
そんなある日のことだ。
わたしは夕方、なんとなくつけていたテレビを見ていた。
そして流れてくるニュースに釘付けになった。
それは渡辺通りのゴールド免許センターが移転するというものだった。
その日は最後の営業日だったらしい。見覚えのある場所がカメラに映されており、免許を更新しようと並んでいる人たちがいる。「今日が最後なんてびっくりしました」と女性が驚きの表情で語っている。
なんだって、とわたしは息を呑んだ。
移転、と頭の中で単語が踊る。移転、移転、移転するだと。
せっかくわたしでも行ける便利な場所にあるのに。免許センターが入っているビルが老朽化したからですか。そうですか。
移転先はどこですか。そうですか、博多ですか。自宅からはさらに遠くなるわけですね。
普通の人にはわかりやすい場所なんでしょうね。
しかしわたしにはどうなんでしょうね。
わたしでもたどりつける場所なんでしょうか。
免許は更新したばかりだ。次の更新までまだ4年ある。
しかし4年後、無事にゴールド免許を維持していたら、わたしはどうやって免許センターまで行こうかと頭を抱えているはずだ。
ああ、4年後が辛い。