
オスのトラ猫の話
実家にはオスのトラ猫がいた。名前をみゅうという。(みゅうが実家に来たいきさつについては触れると長くなるのでぜひ『愛猫とオイツー』をお読みいただきたい。宣伝でした)
さて、20年以上ぶりに動物を飼うことになったので、実家の家族は手探り状態で猫を飼うことを覚えていった。
フードやおやつやおもちゃに猫ベッド、トイレの設置場所まで。ああでもないこうでもないと試行錯誤していった。
なぜか中心になっていたのは母とわたしだ。オイツーはどうした。
さてこの愛すべきトラ猫は、我が家に来た早々、いろいろと、そりゃもういろいろとやらかしてくれた。子猫の勢いってすさまじいね。
今回は、そんな愛猫のやらかしを紹介したいと思う。

いろいろとやらかしているんです
やらかしその1.ふと見れば首を吊っている
猫を飼うようになって早々、大悲鳴を上げた一件だ。
まだ家に来て1ヶ月も経っていなかった頃だろう。
わたしの部屋もオイツーの部屋も実家の2階にあった。説明が遅れたが、オイツーというのは2番目の甥という意味だ。
オイツーは、オイツーの母親の実家である我が家で、祖父母とオバであるわたしと一緒に暮らしていた(このあたり触れると 中略 『オイツー』をお読み 後略)
その頃まだちび猫だったみゅうは階段を下りることができなかったので、もっぱらオイツーかわたしの部屋をうろうろしていた。
わたしも自分の部屋に子猫がいる状態にだいぶ慣れていた。
わたしは窓際にベッドを置いていたのだが、そのとき子猫はベッドの上を駆け回っていた。子どもは元気じゃのう、と思いながら、わたしもベッドの上に腰をかけて本を読んでいた。
ベッドの横の窓にはブラインドをかけていた。
夜だったのですでにブラインドをほぼ下ろしていて、ブラインドの下部には、上げ下ろしするための紐がUの字に下がっていた。
子猫は元気に布団の上からベッドヘッドへと駆け上がったり駆け下りたりを繰り返している。
ふと気づくと、子猫の駆け回る音がやんでいる。
あれ、と顔を上げたわたしは見た。
ブラインドの紐、そのUの字になった部分に子猫の首がひっかかって、ぷらんと体がぶら下がっている。駆け回ってジャンプしているうちにひっかかってしまったらしい。
世にも奇妙な猫の首吊り、とかいっている場合ではない、わたしは大悲鳴を上げながら、慌てて子猫を紐からはずした。
「なんしよっと!」
ちょっと心臓が止まりそうだった。
ああ、このとき以降、このセリフをいったい何度口にしたことだろう。
子猫は紐から下ろすと、また元気に駆け回り始めた。
勘弁してくれ、とわたしは大きな息を吐いた。
やらかしその2.なぜかストーブに飛びつく
愛猫みゅうを我が家に迎えた最初の冬だったと思う。
九州とはいえ冬は当然寒い。その頃は冬になると台所にストーブを出していた。
お湯も沸かせるしとストーブをけっこう便利に使っていた。(後、ファンヒーターに変更)
今朝も寒いなあ、と思いながら台所でストーブにあたっていた。
そのとき愛猫は、わたしの少し後ろにいたと思う。
ストーブの赤い火が気になったのか、突然愛猫がストーブに飛びかかった。
愛猫の素早さに、そばにいてもまったく反応できなかった。
反応したのは、ストーブの熱さに愛猫が悲鳴のような鳴き声を上げて飛び下がった後だ。
わたしはまたも悲鳴を上げた。
「なんしよっと、もう!」
そのときもわたしはそう言った。
わたしは慌てて愛猫の体を確認した。
愛猫は前足の肉球に火傷をしていた。その後は薬を塗ったり体の他の部分をチェックしたりとちょっとした騒動になった。
愛猫はストーブは熱いと学習したらしく、その後はストーブに飛びかかることはなかった。(よかった、そこまでお馬鹿じゃなかった)
ケガをして以降ストーブを恐がるということもなく、冬場はストーブの前の特等席に陣取って寝ていた。(いや、やはりお馬鹿か?)
愛猫の前足の肉球は、ひとつだけ、ちょっと変形している。
やらかしその3.本棚のてっぺんから電灯の薄い笠に飛び移る

愛猫が降ってきた!
愛猫はよくわたしの部屋にいた。
部屋にはでかい本棚がいくつかあったのだが、元気が有り余っている頃は本棚をキャットタワー代わりにあっちへ行きこっちへ行きしていた。
(その後キャットタワーを設置してからは本棚に乗ることはなくなったよう)
そのときも愛猫は本棚の征服に余念がなかった。
わたしは本棚を背にしてこたつに入っていたので、愛猫が本棚の頂上を目指して上っていたことにまったく気づいていなかった。
そう、わたしはまったく気づいていなかったのだ。
愛猫がわたしの身長よりも高い本棚の天板に上っていたことも。
本棚の天板より少し高い位置にある、1メートルほど離れた電灯の笠に飛び移ろうとしていたことも。
わたしの部屋は和室で、電灯は和室によくあるタイプだった。大小2本の円形の電球を薄い四角の笠がカバーしているタイプだ。笠の中央にある1本の紐で天井から下がっている。
1本の紐で吊られた電灯の、その薄い笠が果たして愛猫の体重を支えることができるだろうか。そんなわきゃない。
愛猫はおそらく電灯の笠に飛び乗るために準備のお尻ふりふりをし、思い切ってジャンプし、見事に笠に飛び乗り、そして。
わたしはこたつに入って本を読んでいた。かたわらにはコーヒーが入ったマグカップ。
突然、がこん、あるいはぼこんという音が響き、頭上から愛猫が落下してきた。
そこは猫で、見事に受け身(?)を取っていた。
わたしは突然の物音と愛猫の落下に悲鳴を上げ、ぐらんぐらん揺れる電灯の笠を唖然として見上げた。埃が盛大に落ちてくる。
地震かと思うくらい揺れる笠を見ているうちにだいたいの事情は呑めた。
愛猫にケガはないようだ。「なんしよっと、あんたは」と呆れて愛猫を見た。
愛猫は、体をすくめるようにして電灯を見上げている。ちょっとびくびくしているようだ。
彼なりに、やらかしたと思ったのかもしれない。
その姿を見ていると怒る気にもならなかった。
しかしマグカップのコーヒーには埃が大量に浮いていた。
その一件以来、愛猫が本棚の天板に乗ることはなくなった。
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