
逃げる夢
街が火に包まれている。
道路のあちらこちらに亀裂が走り、亀裂から大蛇の舌のように炎が伸びている。
昨日まで穏やかに暮らしていたはずの住民たちは、今はエイリアンのような化け物へと変貌を遂げ、炎の街を闊歩している。
もうまともな人間は残っていないのか。
わたしは化け物から身を隠すようにして逃げる。
夜中だというのに炎に照らされて街は明るい。わたしの姿を隠してくれる闇はない。
化け物がわたしを見つける。獲物がいたとばかりに、しかしゆるやかな足取りで近づいてくる。
背後は一面の炎だ。
前は化け物、後ろは炎。逃げられない、化け物に捕まる。
は、と目が覚めた。
自分が荒い息を吐いているのがわかる。
いままで眠っていたとは思えないほどばくばくと心臓が音を立てていた。
じっとりと寝汗をかいている。

ゆ、夢だった……
沈思黙考
ああまたか、とわたしは大きく息をつく。
夢見が悪いのはいまに始まったことではないが、心臓に悪い夢をこうもたびたび見せられたんじゃ(誰にだ)安眠妨害もいいところだ。
枕元の時計を見たら、眠ってから1時間ほどしか経っていない。
いったいなにが原因なんだ。
垂れチチ防止の必要性をいまさらながらに感じておやすみブラを着用して寝ているのがいけないのか。
自覚はなかったが実は息苦しく感じていて、その苦しさが悪夢を呼びこんでいるとかだろうか。
おやすみブラからチチを解放したら垂れチチと引き替えに安眠を手に入れることができるのか。
いやしかし、沖端的悪夢ベスト3を見たときはまだチチはフリーダムだったはずだ。
ベスト3は惜しくも逃したあの夢、そうだ、髪を振り乱した和服の女性が寝ているわたしの体の上に馬乗りになり、私の首を絞めようと腕を伸ばしてきた、あの夢を見たときもたしかチチはフリーダムだった。
ということはおやすみブラと悪夢は関係ないのか。
なら着用は続けよう。垂れ角度は浅いにこしたことはない。
愛用している抱き枕を抱えるようにしてわたしは寝返りを打つ。
体勢と呼吸を整えて目を閉じる。次の夢はいい夢でありますように。
焦る夢
あのー、すみません、お手洗いどこですか?
執事のような格好をしたイケメンがにっこりとわたしを誘導する。
「こちらです、どうぞ」
示されたのは、何十畳あるかわからないほどの広さがある畳敷きの和室。
その真ん中にぽつんと便器が置かれている。和式だ。
いやいや、無理だし。
広すぎだし、横にイケメンいるし、仲居さんみたいな人が出入りしてるし、なぜに大広間のど真ん中に和式トイレ?
無理、これは無理。
「でしたらこちらでどうぞ」
示されたのはJRの車内のように見える、3人掛けのシートが何列も並んだ場所。
シートには乗客が座っている。ほぼ満席状態。
最後尾のシートがなぜか便座。今度は洋式だ。
ここ?
いやいやいや、無理、無理無理。
無理ったら無理。
ぎりぎりの目覚めと祈り
は、と目を覚ます。
夢だ、夢だったよ。
寝惚けた体を起こして現実のトイレに向かう。
安眠を求めて寝る前にホットミルクをがぶ飲みしたのがきいたのか。
あの夢はトイレを求める体と理性がせめぎあって見せたに違いない。
目が覚めてよかった。わたしの理性、ありがとう。
布団の中でボーコーがフリーダムになったら大変なことになるしな。
もぞもぞと布団に戻り、わたしはみたび目を閉じる。
それにしても一晩で見る夢にしてはバラエティに富みすぎじゃないだろうか。
今度こそいい夢、じゃなくてもいいから普通の夢、頼みます。
イケメンだけは再登場熱烈希望。

次はイケメンの出てくる夢がいいな