人の顔が覚えられない

いじける女の子

どうしても覚えられない

あなたは人の顔を覚えるのは得意ですか?
わたしは不得意です。というか、苦手です。というか、まったく覚えられないです。

前にも少し書いた記憶があるが、自慢じゃないが、人の顔は記憶に残らないんです。
会ったときにどんなにまじまじと相手の顔を見ていても、(失礼なやつだ)たとえそのときの会話が盛り上がって楽しくおしゃべりしていたとしても、その人がいなくなってしまうと、途端に顔の記憶はおぼろげになってしまう。

そして次回に会ったときにはすっかり忘れている。
これを2度、3度と繰り返す。2,3回会ったくらいでは顔を覚えられないのだ。

ようやく顔を覚えたと思っても、1ヶ月も会わないとまた忘れてしまう。
かろうじて顔を覚えていたとしても、今度は名前を忘れてしまう。
こんなに接客業務が向いていない人間もいないだろう。

あの頃の努力

我ながら涙ぐましかったよ

会社員時代、この体質(すでに体質だ)のおかげでとても苦労をした。
接客業務が多めの仕事をしていたので、日々冷や汗の連続だった。

わたしだって努力はした。顔以外の特徴で覚えようとしたりもした。体格とか、年齢とか、髪型とか、メガネの有無などだ。しかし会社員、特に男性は、似たような格好をしている。同じようなスーツを着用しているし、似たようなすっきりめの髪型をしている。

わたしの場合はこうなると、見分けがつかない。
スーツの襟元についているバッジ(社章のことだ)で覚えようとしたこともある。しかしこの場合わかるのは相手の会社名だけで、名前まではわからない。

いらっしゃいませ、といいながら訪問客の前に出るときに、相手の名前がわからないというのはとても不安なものだ。
相手が名乗ってくれるならまだいい。しかし何度も来ている訪問客だったりすると、気さくに「こんにちは」だけだったりするのだ。
そのときのわたしの焦り具合がおわかりになるだろうか。

「こんにちは」だけですまそうとするなら、よっぽど何度も来ている人だろう。
なのにまだ顔を覚えていないのか、と思われてしまうだろうが、その通りだ。まだ顔を覚えていないのだ。いや覚えたと思っていたのだが、忘れてしまうのだ。

相手がすでにわたしを覚えていて、「沖端さん、こんにちは」などと言ってくれるのだ。
誰だっけ、と思うときの気まずさときたら、例えようもない。

嫌な汗をかきながら会社名や名前を聞くことになるのだが、ああ、あのときの申し訳なさは、穴があったら入りたくなるほどだ。
こんなに人の顔を覚えないと、すでに社会人失格のような気がする。

会社員だった頃のわたしは、その大きな欠点を少しでもカバーするために、愛想に磨きをかけていたものだ。けして笑ってごまかせと思っていたわけでは、少ししかない。

物事どう転ぶかわからないもので、ひたすら笑顔で訪問客の応対をしていたわたしは、外部からの評判がけっこう良かった。これは自慢ではない、ケガの功名というやつだ。

ああ、今でも冷や汗

冷や汗は続くよ、どこまでも

さて、そんな日々も今は遠く、わたしは会社を退職してセミリタイア生活を送っているわけだ。
現在は短い時間で仕事をしている。
あの冷や汗の毎日とはもうおさらばだ、と思っていたのだが。

なんの因果なのか、今の仕事でも人の顔を覚える必要がある。それもけっこうな人数の顔を覚える必要がある。いやもうこうなると、人の顔を覚える必要のない仕事などないのかもしれない。

そうだ、きっとそうなんだ。仕事というものをしている限り、人の顔を覚えるというのはついて回る必須のことなんだ。きっとわたし以外の人はあたりまえのように人の顔を覚えていくんだ。どうせわからないのはわたしだけなんだ。

いかんなあ、少々ヤケになってしまっている。
だって覚えられないんだよお。わたしだって努力はしているんだよお。人の顔、というものに限り、その努力がまったく報われないだけで。

わたしも多少は学習している。人の顔を覚えない自覚もある。(ありありだ)だから今の仕事を始めるときに宣言していた。「わたしは人の顔を覚えるのが苦手です」と。

その宣言を免罪符にしているわけではないが、わたしは職場の人に、訪問者の名前を何度も聞いてしまう。なんせ1度や2度聞いたくらいでは記憶に残らない。名前は記憶に残ったとしても顔は残らない。

あんまり何度も聞くものだから、職場の人の視線がだんだん冷たくなってくる、ような気がする。あからさまに面倒そうなときもある。
ああ、わざとじゃないんです。
くどいようですが、人の顔が覚えられない体質なんです。

髪型とか体格とか服装とか雰囲気とか、顔以外の要素で覚えるように頑張ってはいるんです。
努力だけは認めてください、お願いします。

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