
オイツーとは2番目の甥のことである
オイツーとは2番目の甥のことだ。姉の2番目の息子である彼とは、彼が中学生のときから同居していた。
彼が母親の実家で祖父母とオバ(わたしのことだ)と同居することになった理由は特にない。
本人は、自宅に個室がないので勉強に集中できる部屋が欲しいからと言ったらしいが、その後の彼の行動を見るに、遠慮なく彼女を連れこめる部屋が欲しかったとしか思えない。
身内が言うのもナンだが、オイツーはイケメンだ。
仕事が体を使うものなので、日に焼けたいい体をしている。
ヤンキー風イケメンでガタイがいいとなるとガテン系だと思われがちだが、同居時の彼の職業は船頭だ。
顔と体で世の中渡れるのは若いうちだけだからな、とときおり無性にいってやりたい衝動に駆られるが、どう聞いても負け惜しみにしか聞こえないのでいわない。
オイツーが同居したらこうなった
オイツーと同居するようになって、若い男が家にいるとは騒音だったりうるさかったりやかましかったりすることなのだなと思った。
オイツーは友人たちをどんどん連れてきたし、夜中だろうが明け方だろうが関係なく大騒ぎする。
田んぼに囲まれている田舎家のことで周囲の家を気にする必要はほぼないが、同じ屋根の下(おまけにわたしの部屋もオイツーの部屋も同じ2階だ)の人間にとっては問題大アリだ。
大騒ぎの翌日ともなると、ふと見た部屋の中で夢のあととばかりに5人も6人も野郎共が雑魚寝している。
なんてうっとうしい光景だろう。
彼が大人になるにしたがってほどよい距離感ができてきたが、ひところはよく怒った。
わたしの人生、あんなに怒っていた時期はほかにない。しょっちゅう説教したり怒鳴ったりしていたので、彼から見ればわたしはさぞかし口うるさくてやかましいオバだったことだろう。

当時はしょっちゅう怒っていたよ
友人を連れてくるのが落ち着いた頃、今度は彼女を連れてくるようになった。
そうか、若い男が家にいるというのはこういうことでもあるのか。
それはそれでまた別口の説教になったりして、反抗期の子供を持つ親とはこういうものかと思ったりもしたのだが、多分こんなものではないのだろう。
ある日オイツーの部屋で
ある日の夕飯時、母が食事ができたとオイツーの部屋に声をかけにいった。
たしか今日はオイツーの彼女が遊びに来ていたはずだが、と先に食事を始めていたわたしは思った。
どうやらその日、母はオイツーの彼女が遊びに来ていたことを知らなかったらしい。
実家は和風の家でもあり、親の考えが昔ながらなこともありで、トイレ以外に鍵がかかる部屋はない。
そして母は、誰かの部屋に入るときにノックをする習慣がない。
わたしはそれについて何度も文句を言ったのだが、母の行動が改まることはなく、母はいつも声をかけると同時に部屋の扉を開く。
まもなく台所に戻ってきた母は、いわく言い難い表情をしていた。
「いまオイツー(母にとっては孫だが、まぎわらしいのでオイツーで統一する)の部屋に行ったんだけど」
おそらく、ご飯だよ、というと同時に扉を開けたことだろう。

オイツーよ……
「部屋が真っ暗だった。すぐ閉めたけど」
そうきたか。
「玄関見たら彼女のものらしい靴があった。真っ暗な部屋でなにしてたんだろう」
わたしは茶碗を手にしたまま答える。
「真っ暗じゃないとできないことをしてたんじゃないですか」
母の形相が見る間に変わっていった。脳裏にどんな単語が渦巻いているか容易に想像できようというものだ。
オイツーよ、キミも急なことで驚いただろうが、ばあちゃんはただでさえ血圧が高いんだから気をつけてやれよ。
「もう一回オイツーの部屋へ行ってくる!」
止める間もなく、母は憤然と再び台所を出ていった。
オイツーの名誉のために(いまさらか)後の展開は伏せるが、オイツーが自力で部屋に鍵を取りつけたのはすぐあとのことだ。
わたしにしたところで、その後、真っ暗な部屋、どころではない場面に出くわすことになるのだが、まあそれは別の話だ。
オイツーに殴りこみをかけられなかったら書きましょう。