
お嬢様ってこんな人

お嬢様だあ
お嬢様って、こういう人のことをいうんだろうなあ、という女性に会ったことがある。
最初に会ったのは専門学校に通っていたときだ。わたしが選択した科とは別の科に通っている女子だったが、合同授業などで話すうちに仲良くなった。
彼女の家に遊びに行く機会があり、彼女の家が、いわゆる高級住宅地にあったことに驚いた。この場所にこんなに広い庭付きの一軒家があるのかと。
近くには親族の家が建ち並んでいるらしい。
当然のように彼女の父親はオーナー社長だ。
彼女自身はおっとりとしているにこやかな人で、とても言葉のきれいな人だった。
立ち居振る舞いも品があり、そうか、こういう人のことをお嬢様というんだな、と思った。
ちなみに彼女の家には通いの家政婦さんがいて、本当にお嬢さんと呼ばれていた。
なにしろン十年前のことで、テレビの中の、壁から顔を半分覗かせている女性(家政婦は見た的な)ではなく、リアルで家政婦さんを見たのはあれが初めてだった。
あれ以来、お嬢様だなと思う人に何人か出会った。
総じて皆さん穏やかで振る舞いが上品で、言葉が美しい。
わたしが思いこんでいるだけだと言われたらそれまでだが、マンガに出てくるような、手の甲を口元にあてて、おっほっほ、と高笑いするようなセレブはひとりもいなかった。
当然マウントを取ってくるようなこともない。
お嬢様はマウントを取る必要はない。だって誰かと比べるまでもなくお嬢様だから。
金持ちケンカせずとはこういうことなのだろう。
子どもの頃のこと

お嬢様?
話はかなりずれるが、わたしが小学生の頃、母は近くの家族経営の会社でパートをしていた。
お嬢様となんの関係があるかと思われるだろうが、まあ聞いてください。
その会社社長の娘にわたしの同級生がいた。母の勤務先の娘なので、仮に娘子ちゃんとしよう。
娘子ちゃんは美人で成績のいい子で、クラスでも目立つ子だった。いまならカースト上位とでもいうのだろうか。
近所には別の同級生も住んでいて、こちらもクラスで目立つ子だった。勝ち気な子だったので、勝子ちゃんとしよう。こちらもカースト上位タイプだ。
わたしはいたって地味っ子だったが、家が近いということもあり、3人で登下校することもあった。
そのときも3人でいたのだが、突然勝子ちゃんがわたしに言った。
「アサヒのお母さんは娘子ちゃんの家で働いているんだから、アサヒは娘子ちゃんのことをお嬢様って呼ばないといけないんじゃないの」
娘子ちゃんがその言葉にどう反応したのかは覚えていない。
勝子ちゃんがどういう意図でわたしにそんなことを言ったのかもわからない。
カースト上位の娘子ちゃんにおもねりたかったのか、地味っ子のわたしをからかいたかったのか、それとも下に見たかったのか。
お嬢様にはなれないけれど
小学生ながらマウントを取ってくる勝子ちゃんがヒネていたのか、それともそれを聞いて、こんな田舎町で家族経営の会社をやってるからお嬢様っていわれてもねえ、と思ったわたしがヒネていたのか、どっちだろう。
どちらにしろ、わたしが娘子ちゃんを「お嬢様」と呼んだことはない。
まあ周囲に呼ばれなければ成り立たない『お嬢様』は、そもそも『お嬢様』じゃないだろうしね。
わたしは天地がひっくり返ってもお嬢様にはなれない。(まあお嬢様という年でもないが)
だがしかし、お嬢様のいいところを取り入れる分には構わないだろう。
とりあえずは『金持ちケンカせず』の精神を持ってみよう。そして立ち居振る舞いと言葉を美しくするのだ。美しい日本語って素晴らしい。
根っ子から葉先まで庶民なので、たまには「クソだりいな」と言いたくなるときもあるだろう。
そのときは潔く天に向かってそう叫ぼう。