お茶で騒動(ただし自分だけ)

お茶出し猫

お茶を淹れる話

お茶のトラブルの話

あれは会社に入って数年経ったという頃だ。
その頃はなんにつけお茶を淹れていた。自分のお茶はもちろんだが、来客のお茶も社員のお茶も淹れていた。

会議のときは参加人数分のお茶が必要になる。
会社にはやかんサイズの大きな陶器の急須があって、会議のときはその大きい急須3、4個分のお茶を作っていた。
毎回毎回会議のときはお茶作りが大変だったよ、ほんと。

そしてその日もわたしは会議用のお茶作りにいそしんでいた。
大きな急須にいっぱいのお茶を淹れて、両方の手に1個ずつ急須を持っていた。

先輩と一緒にお茶出しをするために会議室へ急須を運んでいく。
会議室は上の階にあったので、階段を上っていたのだが、わたしは階段で足を滑らせてしまった。わたしはこのたぐいのうっかりを実によくやる。
不幸だったのはそのとき両手に、中にたっぷりとお茶が入ったでかい急須を持っていたことだろう。

でかい急須を持ったまま階段でコケる

急須を持ったまま階段で転んでしまったが、階段を上っていたので、段に膝をつくような格好になった。
そして当然だろうが、急須はふたつとも階段にぶつかった。

自分が打ちつけた膝の痛みよりも、階段にぶつかって派手な音を立てた急須が気になった。
だがさらに当然なことに急須は2つとも見事に割れた。
あたりに陶器が割れる高い音が響き、そして階段を滝のようにお茶が流れ落ちていく。

「沖端さん、大丈夫?」
心配そうに声をかけるのは、一緒にお茶を運んでいた先輩社員だ。
わたしは呆然と、自分が引き起こした惨状を見下ろした。
淹れたてのお茶が流れ落ちていくので、階段についた膝やむこうずねが熱いと気がついたのはちょっと後だ。

熱つっ、と身を起こす。このお茶熱っついわ。淹れる温度を間違えたかな。
両手を確かめると、手の中に残っているのは、急須の取っ手とそれに続く急須の上の部分だけだった。あとは階段に散らばっている。
「ここはいいから、足を冷やしておいで」

先輩の優しい言葉に甘えて、わたしは洗面所へ足を冷やしに行くことにした。
なんせ熱々のお茶が流れてきたので、最初は気づかなかったが、洗面所で見たら膝からむこうずねにかけて赤くなってひりひりしている。
痛たた、と呻きながら、わたしは洗面台に乗り上げるようにして水道水で足を冷やした。

足も痛いが心も痛い

あちこちが痛い

ここまで書いて気になったんだが、わたしは割れた急須やら濡れた階段やらを片づけたり拭いたりしたんだろうか?
記憶があいまいでよく覚えていない。だいたい急須やら湯飲みやらを割った記憶が多すぎて1回1回をよく覚えていない。自慢にはまったくならないが。
先輩がたに片づけてもらったのだとしたら大変に申し訳ないことだ。

階段での急須割り事件であと覚えていることといえば。
急須を割ったときに(あんまり何度も書くとメンタルにくるね)ちょうど他部署の年配男性上司が通りかかったのだが、「おやおや」と面白そうに見ていた。

他人事だと思っておやおやじゃねーわ、と思ったがまあそれはいいのだが、その後わたしが洗面所で必死になって足を冷やしているときに、その上司がなぜかまた通りかかった。

洗面所が廊下沿いにあったのと、わちゃわちゃしていたので洗面所の扉が半開きになっていたのとで、上司がひょいとのぞきこみ、
「あー、その赤さだと火傷は1度ってとこかな。お気の毒」
と、いかにも軽そうに言って立ち去った。

なんかちょっと腹が立ったんですけど。これって、エコエコアザラク的な案件ですか?
え、自業自得だろうって?
冷たくないですか? もうちょっと温かさが欲しいです。適温のお茶くらいの温度でお願いします。

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