
恋愛トラブル、ただしわたしではない
あなたは友人の恋愛トラブルに巻きこまれたことはありますか。
わたしはあります。
あれは、わたしが20代になったばかりという頃です。
わたしは当時、喫茶店でアルバイトをして生計を立てていましたが、まあこれが今でいうブラックバイトでした。
人生であの頃が一番働いていたんじゃないでしょうか。
まあこのあたりは機会があればまた書くとしまして。
ビルの中にある飲食店街の店にいましたので、近くの店で同じようにアルバイトをしていた女子と仲良くなったんです。
年が近かったんですよね。彼女は学生バイトだったんですが、他にはあまり年の近い子がいなかったので、わたしと彼女はわりとすぐに仲良くなりました。
彼女の名前をAちゃんとしましょう。
Aちゃんは年こそ近いものの、わたしとはかなりタイプの異なる子でした。
わたしは昔も今も地味っ子ですが、Aちゃんは明るくて賑やかな子でしたね。Aちゃんがそういう子だったからすぐに仲良くなったんでしょうねえ。わたしは自分から積極的に行くことのできるタイプではなかったですから。
それはいいとして、Aちゃんは恋愛方面もなかなか賑やかな子でした。わたしはAちゃんが繰り広げる恋愛模様を、マンガのストーリーでも聞くような気持ちで感心しながら聞いていたような気がします。
複雑な恋愛模様に

五角、はたまた六角
しかし、だがしかし、Aちゃんの恋愛は、だんだんと複雑怪奇な模様を描いていきます。二股をされたのしたのから三角関係をあっという間に通り過ぎ、四角すら追い越し、すでに五芒星だか六芒星だかの体になっています。
さすがに黙って見ている訳にもいかず、わたしは口うるさくAちゃんに注意しました。
今から思えばわたしも生意気なことを言っていました。若かったんですねえ。そんなだらしない恋愛をするな、とか言っていたんですから。
余計なお世話と言われてしまえばそれまでだったんですが、わたしが怒っているときは、Aちゃんも、うんうん、とか神妙に聞いているんですね。
だから恋愛模様を整理するかと思えばまったくそんなことはなく、模様はさらに入り組んでいきます。
そうこうしているうちに、五角だか六角だかを形作っていたうちの一角さんが暴走したんです。なんでも昔はやんちゃしていたんだそうです。
一角さんがAちゃんとケンカになったようなんですが(そりゃなるわな)Aちゃんと連絡が取れなくなった一角さんが、当時は携帯電話なんてないもんですから、心当たりをあちこち探し回ったらしいんですね。それで、わたしの自宅に電話をかけてきたんです。
Aちゃんとわたしの共通の知り合いがいて、Aちゃんなら沖端と仲がいいから、沖端ならなにか知ってるんじゃないかとかなんとか言ってわたしの電話番号を勝手に教えたようです。ちょっと後で話をしようか。
暴走する一角さん

真夜中の暴走
一角さんから自宅に電話がかかってきたのは夜中でした。繰り返しますが、夜中です。わたしは翌日のバイトが朝早いものですから、すでに寝ていました。電話に起こされましたけれど。
それまでいろいろとAちゃんから話を聞いてはいましたが、一角さんと会話をしたのはそのときが初めてでした。
Aがどこにいるか知らないか、と一角さんは言うんですけどね。知らなかったので、そう言いました。
隠さないで教えてくれ、と一角さんは言いつのりますが、知らないものは教えられません。といいますか、実をいえばなんとなくAちゃんの居場所の見当はついていました。
五角だか六角だかの別の一角のところだろうなあ、と思いましたが(あたっていた)、この状態の一角さんに教えることはできません。
正直にいえば、わたしを巻きこむな、ともこの頃は思っていましたしね。
わたしがなにかを隠しているとでも思ったのでしょうか、それまでは懇願するような一角さんの口調が急に変わりました。
すごんだ口調で脅しをかけてきたんです。
いやあ、「おまえの店を潰しにいってやる」とか言われたの、あのときが最初で最後ですよ。
わたしもちょっと寝起きでぼけていたので、つい怒鳴り返してしまいましたが。(そしてわたしが怒鳴ったら、一角さんはあっさり謝っていましたが)
翌日、本当に一角さんがわたしがアルバイトをする店までやってきたので、ちょうど来ていたガタイのいい男性常連さんたちの影に隠れてしまいました。常連さんたち、ありがとう!
その後もなにやらすったもんだしていたようで、落ち着くまでけっこうかかったようです。
思い出すと、今でもちょっとげっそりします。
人の恋愛に口や首を突っこんではいけないという真理は学びました。
恋愛って端で見ているだけで疲れるなあ。巻きこまれないだけ2次元を見ているほうがマシ、と思った沖端でしたとさ。