
ショートショートストーリー
これはわたしがずいぶん昔、少女小説誌(!)に投稿して、掲載されたショートショートストーリーの2本だ。
賞金などもいただいて、とても嬉しかった。せっかくなので載せようと思う。
内容は当時からまったく変えていないので、沖端はこんな話を昔書いていたのかと面白がってもらえたらとても嬉しい。
こういう話を好んで書いていたあたり、やはりあまり性格はよろしくないのだろうか。

不変の愛
天は二物を与えずというが、あれは嘘だ。
俺はあらゆるものを持っていた。
世間に名の知れた大学に入学し、バイトで始めたモデルで有名になり、それを元手に興した事業は大成功した。
皆が俺を羨み、俺の周りには女たちが群がった。
別に幸福だと思ったこともなかったが、天とやらはそうは思ってくれなかったらしい。
反動のように不幸が襲いかかってきた。
事故を起こして全身に傷を負った。
俺の外見を愛した女たちは去った。
入院している間に会社が傾いた。
俺の金を愛した女たちはどこかへ行った。
ヤケになってクスリに手を出し、警察に捕まった。
俺の知名度を愛した女たちが逃げた。
なにもかもをなくした俺の前に、たった一人の女が残った。
それは俺が今まで顧みなかった女だった。
「おまえは俺のなにを愛したんだ?」
俺は不自由な声で女に問うた。
「あなたの存在すべてを」
やさしく微笑んだ母を、俺はしっかりと抱き締めた。
俺は幸福だ。
そして俺は奈落の底で安堵する。

契約
俺は祈っていた。
俺の愛する、たった一人の女性が他の男と結婚する。
彼女を取り戻したい。
それができたら、悪魔に魂を売り渡してもいいとさえ思っていた。
俺の願いが届いたのか、ある晩一人の男が突然俺の前に現れた。
黒ずくめの服を着た、青白い顔のその男は言った。
「おまえの望みをかなえよう。おまえの大切なものとひきかえに」
俺は一も二もなく飛びつくようにうなずいた。
「彼女を俺のものにしたい。かなえてくれるなら、あんたになんでもやる」
そこまで言った後、俺は慌ててつけ加えた。俺の一番大切なものは彼女だからだ。
「ただし、彼女自身には手を出すな。俺の命もだめだ。彼女と一緒に生きていくんだからな」
男は黙ってうなずき、現れた時と同様に忽然と姿を消した。
正直、俺は半信半疑だった。
数日後、俺は彼女の披露宴会場へと出向いた。
なんと彼女はそこからウェディングドレス姿のまま飛び出して来、俺たちは手に手を取ってその場から駆け出した。
映画『卒業』のように。
契約は果たされ、彼女は俺のものになったのだ。
天にも昇る気持ちで、その夜初めて俺は彼女を抱いた。
翌朝、ベッドの中で俺は眠る彼女を見下ろした。
彼女が、なんの変哲もないつまらない女になっていた。
悪魔は俺から『彼女を愛する心』を取っていったのだ。