
人は、交際する仲間や環境によって、よくも悪くもなるというたとえ ── 新明解故事ことわざ辞典
前説 カナのこと
カナという友人がいる。黙って立っていれば美人なのに、なぜこいつはこうなんだろうというところの、いわゆる『残念な美人』だ。
長年演劇をやってきた芝居っけたっぷりなカナと一緒にいると、時折とんでもない目に遭うことがある。
うっかり心臓が止まりかけたこともある。(このあたりの話は、ヘタれエッセイ『それはわたし編』の『サダコがきっと来る」をお読みいただきたい)
鉄板ネタにしてみた
だがしかし、わたしは転んでもただでは起きない主義だ。
転んだからにはネタを掴めともいう。
この体験をネタにしない道理があるだろうか、いやない。(反語)
わたしはカナによる『サダコが来る』恐怖体験を、飲み会のネタにすることにした。
ウケた。そりゃウケた。それ以来、飲み会でのわたしの鉄板ネタだ。
あまりにもウケるものだから、本家本元のカナを会社の飲み会に召喚したくなったくらいだ。

まあウケたわ
わたしはちょっと楽しくなってきた。
あれは、そう、会社の慰安旅行に行ったときだったと思う。
夜も更けてきた頃、女子部屋ではおしゃべりに花が咲いていた。
ちょっとサダコを演ってみた
わたしはそこでも鉄板ネタを披露した。
夜のガールズトークということで、わたしはちょっと調子に乗った。いつもなら話をするだけなのだが、そのときは実演も交えてみた。
小芝居は好きなほうだ。
わたしはその頃胸の下あたりまでのセミロングヘアだったが、カナを真似て顔の前にばさりと髪を垂らして、後輩女子の元までずりずりと這い寄った。
友達がこんな風にさあ、と笑いを取るつもりだったのに、後輩女子の顔は引きつっていた。
「も、もういいです、沖端さん。止めてください。怖いです」
怯えた声で言って、後輩女子は別の後輩女子に抱きついた。
え、怖いの?
カナの鬼気迫るサダコに比べたら、こんなの、お遊戯だよ?
こんなので怖いの?
部屋は明るいのに?
何人も人がいるのに?
わたしが着ているのはパジャマなのに?
こんなことなら、白いワンピースを持ってくるんだった!

もっとウケたかもしれない