
あれは免許取り立ての頃

ぴかぴかの若葉だったんです
以前に免許取り立ての頃の話を書いた。
こっちが若葉マークだと思ってなにしてくれとんねん、的な出来事だったのだが、そんな話ばかり書いていると気持ちが荒んでしまいそうなので、今回はほんわかした話を。
免許取り立ても取り立てのぴちぴちでイキのいい頃の話だ。たしか、始めて実家から駅まで車で走ったときではなかっただろうか。
道路自体は走り慣れたものだ。原付で数え切れない回数走った道でもある。
が、その日運転しているのは、扱い慣れた原付ではなく自動車だ。
繰り返そう、買ったばかりの軽自動車だ。ちなみに新車だ。
自慢じゃないが即金で買った。わたしはローンが嫌いなのだ。
話を戻そう。初めての車での通勤だということで、朝はかなり時間の余裕を持って家を出ていた。その甲斐あって駅近くの駐車場に着いたときはまだ電車まで時間があった。
だがしかし、ここで思わぬ障害が待ち受けていた。
焦りもあったのだろうが、自分の駐車スペースにバックで車を入れることができない。バックナビなどという便利なものは当然ない。
わたしは横を見たり後ろを見たりしながら何度も切り返しをしてスペースに入れようと頑張っていた。
だが焦れば焦るほど車が上手く動かない。実家の駐車スペースではできるはずのバックでの駐車がどうしてもできない。
時間はどんどん過ぎていく。自分の駐車スペースの前方に斜めに車を止めた状態で、わたしはハンドルをどう動かせばいいのかわからなくなり、冷や汗を流していた。
見知らぬお兄さんに助けを求める

ためらいはどこかへ投げ捨てた
そのとき、ひとりの若い男性が駐車場の奥から歩いてくるのが見えた。わたしとほど近い場所に彼の駐車スペースがあったのだろう。彼は駐車場から出ていこうとしているようだ。斜めに止まったままのわたしの車を、ちらりと彼が見る。
普段はヘタれだが、こんなときだけわたしの行動は早い。恥や外聞という言葉をどこかにすっ飛ばしていたともいえる。
わたしは一旦止めた車から文字通り飛び降り、すみません、と彼に声をかけた。
彼は少し驚いたようにわたしを振り返る。
そしてわたしは見ず知らずの男性に頼みごとをした。うまく車をバックさせることができません。すみませんがわたしの車を駐車スペースまで入れてもらえませんか、と。
男性も驚いたことだろうが、よほどわたしの顔が切羽詰まっていたのか、快くわたしの車を動かしてくれた。
あんなに手こずっていたのが嘘のように、彼が運転するわたしの車は、あっさりとスペース内に収まった。
わたしは何度も彼にお礼を言った。
ありがとう、本当にありがとう、親切なお兄さん。
よかった、これで車を放置して逃げなくてすみます。
お兄さんには、今度駐車場で声をかけられたら(わたしみたいのではなく)それはそれは素敵なお嬢さんで、2人の間に恋の花が咲き開く願いごとをしておきます。