若葉マークをつけていた頃の話

焦って運転する女性

若葉マークの頃の話

ぴかぴかの若葉だったよ

わたしは車の免許を取るのが遅かった。それまでは原付で事足りていたので、なかなか車の免許を取るふんぎりがつかなかった。困らない限りは腰が上がらないタイプなのだ。

自宅から一番近いバス停が撤去(廃線?)されることになり、次に近いバス停まではけっこうな距離があり、おまけに本数が少ないので、これは雨の日の通勤に困ると、ようやくその時点で車の免許取得に本腰を入れた。

運動神経にも反射神経にも元から自信はない。当時車の免許を取るには年齢分の金額がかかるといわれていたが(30才なら30万円とか)わたしはそれを身をもって証明した。
そんなこんなでようやく免許を取ったのだが、これはわたしが若葉マークを車につけていた頃の話。

青い車のあんちゃん

若葉なんだよお

車を使うのはもっぱら通勤で、実家から最寄り駅まで車を使っていた。なので、実家に住んでいたときは駅の近くに駐車場を借りていた。
駐車場を出てすぐは細い道が続く。

すぐ横に川とガードレールがある細い道を走っていると、前方から青い車がやってきた。
2台の車がようやくすれ違えるくらいの細い道だ。免許取り立てのわたしは、ひやひやしながら運転していた。

が、前方数メートルというところで、青い車がぴたりと止まった。それきり動こうとしない。青い車を避けるためには、わたしが自分の車をうまく蛇行させて進まないといけない。

運転にまったく自信がない若葉なので、うまく避けて進むというのを青い車のあんちゃんに担当してほしかったが、あんちゃんはまったく動こうとしない。
ちらりと見ると、あんちゃんは運転席にどっかりと背中を預けて、傍観の構えだ。

そのときのわたしはあんちゃんの態度に腹を立てる余裕もないくらい焦っていた。
なぜか自分がなんとかしなければと考えてしまい、じりじりと自分の車を動かしていた。
わたしがわたわたと車を動かしているのをあんちゃんは眺めたままだ。

焦っているうちにやらかしてしまい、すぐ横のガードレールで、買ったばかりの新車を思いきりがりがりと擦ってしまった。うわ、と自分でも思った。

わたしが自分の車を擦った途端に、青い車のあんちゃんは車を急発進させた。それまでのてこでも動かないポーズはなんだったんだと突っこみたくなるくらいの見事な走りっぷりだ。そしてあっという間にわたしの車の横をすり抜けていった。

最初からそうしろよ!
あのときの修理代は痛かった。

とりあえず青い車のあんちゃんには、うっかりぶつかった車が超高級車で、法外な修理代を請求されたあげくに、次年度の保険料金が爆上がりする呪いをかけておいた。
残念ながらその呪いが成就されたかどうかはわからない。

グラサンかけた携帯所持のあんちゃん

これも会社帰りのことだ。借りていた駐車場からすぐは細い道が続く。その細い道から大きい道路に合流するときの話だ。
車の流れが途切れたときを見計らって大きい道路に左折で入った、はずだった。ところが、大きい道路の後方から走ってきていた黒い車がいた。黒い車の主は、わたしが自分の車の前に割りこんできたと捉えたらしい。

わたしが合流したところで、突然スピードを上げ、大きく隣の車線に膨らみながらわたしの車を追い越し、わたしの車の前に回りこみ、そして急ブレーキをかけて止まった。わたしも慌ててブレーキをかけた。
後続車がいなかったのは幸いだったが、鼓動が跳ね上がった。

さて無理矢理わたしの車を止めた黒い車から、あんちゃんが降りてきた。
日も落ちようという夕方なのに、なぜかサングラスをかけている。そしてなぜか携帯電話をかけている。今なら即パトカーか白バイに止められるだろう。

「てめえ、危ねえだろうがあ!」
怒鳴りながらあんちゃんはわたしの車に近づいてきた。

若葉マークに向かって失礼だな。安全運転すぎてとろいことはあっても、危ない運転では間違ってもない。(はずだ)
突然怒鳴られて正直腹が立った、が、ここでやり合うほど無謀ではない。あんちゃんと同じ土俵に立つ気はないし、なによりわたしは我が身がかわいい。

わたしは車の窓を開け、近づいてくるあんちゃんに向かって神妙な顔を作った。
「危なかったですか? すみませえん」
自分の性別を生かせるときは生かさなければ。

わたしが(一応)若い女性だったからか、それとも下手に出たからか、あんちゃんはころりと態度をやわらげた。
「今度から気をつけなよ」
そしてサングラスと携帯をかけたまま、自分の車に戻って発車させた。

黒い車のサングラスあんちゃんには、雪道を運転しているときにスリップしてそのまま田んぼにダイビングする呪いをかけておいた。
残念ながらその呪いが成就したかどうかもわからない。

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