激アツ液体を太ももにぶちまけた話

火傷しそうな子

なにが起こったんだ

それはひとり暮らしをしているわたしが、久しぶりに実家で過ごした休日の昼のことだった。
実家にいると自分で作らなくても食事ができる。なんて楽なんだろう。
わたしはほくほくと姉が作った味噌汁を飲んでいた。
あちち、この味噌汁かなり熱いよ、と思った2瞬後、わたしは味噌汁を左の太ももにぶちまけていた。
わたしはこのたぐいのうっかりを実によくやる。
熱い味噌汁だったのはアンラッキーだったが、そのときジーンズを穿いていたのはせめてものラッキーだった。
しかし熱々なことに変わりはない。

あっじいいぃぃ!

雄叫びのような悲鳴を上げ、わたしは味噌汁をテーブルにこぼしたまま風呂場に駆けこんだ。
こぼした味噌汁は姉が片付けてくれた。ごめんよ、姉ちゃん。

蘇るあの日の出来事

この熱さには覚えがある。
遡ること数年(正確な年数はわからない)。まだわたしが実家で暮らしていた頃の話だ。
朝食を摂ろうとしていたわたしは、なみなみとマグカップに入っていた激アツのコーヒーを右の太ももにぶちまけた。
アンラッキーなことにそのとき着ていたのはパジャマだった。


脳天まで響くかと思うくらい熱かった。
慌てて風呂場に駆けこんで冷水シャワーを足にかけた。
その日は平日で、会社に行かなければならないわたしは時間を気にしていた。
結果、患部を適当に冷やしただけで切り上げてしまった。
後日患部を見た同僚に、なぜその状態で仕事に行こうと思ったんだと呆れられた。

時間がなくて焦ってたんだよ

適当に冷やしただけの患部はあっという間に赤く腫れ、じくじくとうずき、水ぶくれができ、小さな水ぶくれがくっついて膨張し、それはそれは悲惨なありさまになった。
痛みもひどい。
その日はさすがにストッキングは穿いていなかったが、仕事中も気になってちらちらと制服のスカートをめくっていた。
自分の席がフロアの端にあったのは幸いだった。仕事中に何度もスカートをめくる女。怪しすぎる。


怪しい行動をしている間にも足は分単位で変化していく。スカートが患部にこすれるのがなんとも辛い。痛みも大きくなる。
自分の右の太ももが見たこともない肌の色になった頃、わたしは同僚に声をかけた。
「ごめん、ちょい抜けして病院に行ってきていいかな」
いぶかしげな顔をする同僚に、
「いやあ、今朝火傷しちゃってさあ」
へろりとスカートをめくると、


「早く病院行ってきてーー!」

同僚の顔がムンクの叫びになった。

火傷が治るまでにかなりの日数がかかった。
太ももの火傷の範囲は、指を揃えて手のひらを置いたときの、ちょうど指先から手首くらいまでの大きさのいびつな楕円形。
ユーラシア大陸の形に似ていた。

肌から赤みが消えるまでに1年以上かかったのではないだろうか。
赤みが消えた後でも、入浴したときは、ぽわんとその部分が赤くなった。

回想終了。現在に戻る

火傷は最初の処置が肝心だね!

回想が長くなった。
経験は糧になるものだ。
2度目の太もも激アツ液体ぶちまけ事件が起きたとき、わたしはするべきことを心得ていた。
繰り返すが、経験は糧になる。


わたしはジーンズの上から冷水シャワーをかけた。
服を着てやけどをしたときは服の上から冷やす。ここ大事。
慌てて服をはいだりすると、痛めた皮膚が一緒にはがれたりするから要注意だ。


そして冷やす。とことん冷やす。感覚がなくなっても冷やす。ここも大事。

休日だったことはよかった。時間を気にする必要がない。
実家の水道代は気になるが、この際かんべんしてもらおう。
風呂場の排水溝に小さく崩れた豆腐が流れていったような気がするが、これも気にするのはやめておこう。


充分に冷えた頃を見計らって、そろりとジーンズを脱いだ。
患部はうっすらと赤くなっている。
患部の少し上に向けて冷水シャワーをかける。
患部に直接シャワーや流水をかけると、その刺激で弱った皮膚を痛めてしまうおそれがあるからここも要注意だ。

火傷は最初の処置が肝心だよね

しつこいくらい冷やしたのがよかったのか、左の太もものやけどはごく小さいもので済んだ。
小指の先ほどの水ぶくれができたくらいだ。

前回がユーラシア大陸だったことを思うと、結果の違いには驚くばかりではないか。
これくらいならわたしにとっては無傷と同じだ。
よかった、と胸を撫で下ろす。
あやうく右と左でおそろいの痕ができるところだった。

経験は糧になるよね

えーと、なにを書こうとしていたんだっけ。
ああそうそう、穿くならショートパンツよりジーンズのほうがお勧めです。

え? 食事のときはぼんやりするな、が正しいだろう?
まあそうともいえます。

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