
博多へ行くぞ(超久しぶり)
つい先日の話だが、ものすごく久しぶりに博多へ出向くことになった。
久しぶりすぎていったい何年ぶりなのかちょっと思い出すことができない。
天神までならそれでも1年に1、2回は行くのだが(友人との飲み会のためだ)そこから地下鉄を使って博多へとなると、まずもって行くことはない。(バスは路線がよくわからないので使わない)
博多かあ、わたしが知ってる頃とはずいぶん変わってるだろうなあ、と思った。
学生時代に博多へ通っていた頃はあるが、それこそめまいがしそうなくらい遠い話だ。
今回の用事は先方との約束があってのことだ。当然目的地がある。
先方からの連絡には丁寧に目的地のビルまでの道順が示されていた。なんなら要所要所の写真まで添付されている。地図で見るかぎり博多駅からそんなに離れてもいないよう。
博多駅からの所要時間は5、6分というところか。
だがしかし、わたしは知っている。自分がものすごく、ものすごーく、方向音痴と地理音痴であることを。
自分でいうのもナンだが、すでに病気レベルだ。
どのくら方向音痴かというと、生まれ育った地元でも用心して決まった道しか通らないくらいだ。うっかり1本道をはずれてしまうと、自分がどこにいるのか自信がなくなる。自分が知っている道に復帰するまで心臓が妙な具合に跳ねる。
地元は観光地と呼ばれているので、時折観光客に道を聞かれることがあるのだが、そのたびにわたしは冷や汗をかいている。
博多行きに話を戻そう。
というわけで、わたしは久しぶりに博多へ行くことにものすごく緊張していた。
先方からのメールに書かれていた駅からの道順を頭にたたき込み、なんなら(スマホの画面が小さいので)メモに大きく書き写すこともした。
前もって先方のいる建物の場所を確認しておくということができたらよかったのだが。日程やら運賃やらの問題でそれもできかねた。

(自分的)遠出は冒険
どきどきの出発
それでもって当日だ。わたしは跳ねる鼓動を抑えながら約束の時間よりかなり早めに家を出た。
これはわたしの習慣だが、初見の場所へ行くときは、さまよう時間を見積もっているのだ。
天神へはなんなく着いた。問題はここから先だ。
さすがに地下鉄への乗り換えに迷うことはなかろうと思ったが、正直に言おう。ちょっと迷った。天神を知っている人にいわせると、これはかなり恥ずかしい。
天神駅って増殖してない? これもビッグバン計画?
ようやく地下鉄のホームに到着だ。まだまだ先は長いぞ。
地下鉄は空港行きと貝塚行きに分かれるかるから少し注意だ。間違えると博多へ着かないぞ。
列に並んでいると、案内表示板を見ていたらしい女性がわたしをふと見たことに気づいた。
長い黒髪が艶やかな美人さんだ。
女性は、わたしに近づき、まだ地下鉄が到着していない線路を指さして、「ハカタ?」と聞いてきた。おっと、このイントネーションは日本以外の方ですね。
どうやら次にやってくる地下鉄は博多へ行くのかと聞きたいらしい。
自分もさっき確認したところなので、わたしは大きく何度も頷いた。
女性は安心したように列に並んだ。
わたしはものすごく方向音痴なのだが、人畜無害な見た目をしている(友人談)せいか、よく道を聞かれる。
信用してもらえてありがたいやら方向音痴で申し訳ないやらだ。
というところで、ようやく博多に着いた。
案内どおりなら駅から5、6分ほどのはずだが、わたしは約束の時間の1時間前には博多駅に着いていた。ここからすんなり目的地のビルへ到着するとは経験上とても思えなかったからだ。
そして博多駅ってこんなに広大なんだね。駅の中だけでさまよえるよ。
わたしが知っていた頃のおもかげはまったくないよ。いったいいつの間にこんなことになってしまっていたのか。あちらこちらの案内板をきょろきょろ見ながら歩く。
まるっきりおのぼりさんだ。まあ間違ってはいない。
なんとか出口まではたどり着いた。こっちの出口でいいはず。
出口から先はすでに謎

ここはどこ……
だがしかし、やはりというか、案の定というか、出口からどう行けばいいのかわからない。
メモに書き写していた道順を見てもわからない。出口からどっちへ行けばいいのだ。右の道か、左の道か?
先方からもらったメールには丁寧なことに出口から先のポイントになる写真まで添付されていたが、写真の場所がそもそもわからない。
どうしよう、と悩んでいる時間は短かった。
方向音痴あるあるかもしれないが、わたしは人に道を尋ねるのにためらいがない。
近くを見ると、あるビルの出口で車両を誘導しているらしい年配の男性がいた。警備員さんかもしれない。
今は誘導する車両もないようで、手持ちぶさたに立っている(ように見える)
わたしは「お仕事中にすみません」と男性に近寄った。
はい、と振り返った男性はにこやかに笑みを浮かべている。よし、とわたしは思った。
「すみません、この場所に行きたいのですが」
わたしは先方から送られていたビル名や道順の案内をスマホに表示させた。
「うーん、このビルは知らないなあ」
男性はちょっと困ったようだったが、いかにも焦っているわたしを放っておけなかったのか、グーグルマップで地図を表示させてみて、と言った。
普段マップを活用することもないので、というか、マップが必要な外出をしないので、マップを出して入力するのに手間取ったが、入力するとあら不思議、現在位置から目的地までの道順が青い線で表示されたではありませんか。グーグルマップ、すごいな。
「この道順通りに行けばいいよ」
わたしは喜んで男性に言った。「ではあっちの道を行けばいいんですね」
わたしの指さした道を見て「地図読めないの?」と男性は言った。
会って10分も経っていないはずだが、わたしが地図を読めないことがばれている。
「道はこっちだよ」男性はわたしが指さした道とは180度逆の道を指した。
こっちでしたか、とわたしは焦り、男性に仕事の邪魔をした詫びと案内のお礼をして、歩き出した。
「そこは車道だからこっちの歩道を歩いて」
しかし簡単にはたどり着かない
おっと、焦ってはいけませんね。わたしはさらに男性に礼をする。
さて、地図どおりなら、この歩道をまっすぐ歩いて、途中で左折すればいい。ここまで来ればあとは簡単か。ちょっと早めに来すぎたかな。
そう思った頃がたしかにわたしにもありました。
途中の道で左折、したはずが、行けども行けども目的地のビルにたどり着かない。
頼りのグーグルマップからは道順の青い線がなぜか消えている。わたしがおかしな動きをしたからだろうか。
道の左右をビルに囲まれて、わたしは博多駅から5分も歩いていないというのに、またしてもわからなくなってしまった。
近くまでは来ているはずなのに。あまりぐるぐる動くとまたわからなくなるのでは、もう一度博多駅まで戻ったほうがいいだろうか。
悩んでいるところ、向こうから今度は年配の女性がやってくる。わたしは迷わず声をかける。
女性はわたしが表示させているスマホの画面をのぞき込んでくれる。
マップを見ながらこのビルが○○だから、と考えてくれて、とてもありがたやです。
はっきりはわからないが、丁目から見てあっちではないだろうか、と示されたほうにわたしは向かった。
向かって道を渡ったはいいが、残念ながら目的地にはたどり着かない。
ああなんで自分はこんなに方向音痴なんだろう。自分で自分が嫌になるとはこのことだ。
道路の一角に大きな街の表示板が備えられていて、それを凝視するも、現在地の表示はわかってもここからどう行けばいいのかわからない。
ちょっと途方に暮れそうになった。約束の時間までにはまだ余裕があるが、わたしは果たして目的地にたどり着くことができるのだろうか。
博多駅からほど近いとあって道は広く、歩道も広く、歩道の端には石造りのベンチが作られている。
ベンチに若い女性が座っているのに気がついた。仕事の休憩中だろうか。
到着したぞ!(すでに冒険気分)
わたしは女性に近寄り、すみませんと声をかけた。
そしてこの女性が、詳しい道を知っていた。ブラボー!
スマホの画面を見せ、このビルに行きたいんですとたずねるわたしに、「そこの横断歩道を渡ってすぐの角を右に曲がればいい」と教えてくれた。
横断歩道は今しがた渡ってきたばかりだが、戻らないといけないようだ。
わたしは何度も女性にお礼を言って、教えられた通りに向かった。
そして、そして! 無事に目的地のビルにたどり着いたのだ!
ビルを見つけたときは、安堵で体中から力が抜けたよ。

着いたあああ
さまよったので20分以上かかったが、順調に来れば、やはり駅から5、6分だ。
最初に男性から教えられた道の、途中で曲がるところを間違えたようだ。方向音痴あるあるだ。
ちなみに用事を終えて帰るときに、ビルで(たぶん)車両を誘導している警備員の男性に再び会った。
手が空いているように見えたので「先ほどはありがとうございました」と声をかけた。
男性はわたしの顔を覚えていたようで、「道はすぐにわかった?」と笑顔で聞いてきた。
いえ、さまよいまして、あの後さらに2人に声をかけました、とはさすがに言えず、「はい、おかげで助かりました」とお礼を言うにとどめた。
ありがとう、親切な皆さん。本当にありがとう。
しかし疲れました。
