
文字を書く機会って減ったよね

自覚のある下手ぶり
いいわけをさせてもらうと、けして自分の名前を忘れたわけではない。
漢字を忘れたわけでもない。いや小学校で習うような漢字が出てこないときがあってそれにはちょっと我ながらどうなのと思わないでもないのだが、とりあえず自分の名前の漢字はわかる。
ではなんのことを書いているのかというとだ。
昔から自分の書く文字にはコンプレックスがあった。字が下手なのだ。
子供の頃に書道を習っておけば、と何度考えたかわからない。
その昔コンプレックスが高じて日ペンの○ちゃんに申し込んだことがある。テキストを見たことも覚えている。
テキストを見ながら文字を練習した、ような記憶もあるのだが、現在自分の書く文字がまったく美しくなっていないところを見ると三日坊主で終わってしまったのだろう。
写経をすれば文字が美しくなるかと思ったことがある。写経の本を買った。本棚に確かに本はある。本をぱらぱらとめくった覚えもある。
どうなったかって? いや、どうにもなってませんが、なにか?
ワープロやパソコンが導入されて日常でも仕事でも文字を書く機会は格段に減った。
そのせいなのか気のせいなのか、書く文字がどんどん下手になっていっているように思える。
下手になっているので余計書かなくなる。書かないからさらに下手になる。見事な悪循環だ。
とはいっても日常で手紙を書くこともほぼなく、字が下手でも別に困らないよね、とあきらめとも開き直りともつかない心境になっていったのだ。
書かなきゃいけないときもあるよね
だがしかし、時には困った事態になる。
そのひとつが冠婚葬祭だ。祝儀袋や不祝儀袋に自分の名前を書かないといけないではありませんか。しかも書くのは筆ペンだ。難易度が高すぎる。
今日、わたしは祝儀袋を前に、正確には別添えになっている名前を書く用の帯を前に頭を抱えている。
書きやすい筆ペンは用意した。(書き味がサインペンっぽいやつ)
まっすぐに書くことができるというスケールもついている。(筆ペンっぽいサインペン、いやサインペンっぽい筆ペンか、についていた)
いきなり本番は恐いので、まずはそのへんの紙に書いてみる。
書き慣れないペンを使っているので文字が、というか、線がよれていく。
なんとか試し書きをしたはいいが、それはいいのだが、わかってはいたが、ものすごく下手だ。
右上がりのくせ字の、バランスの悪い名前がそこにあった。
うわー、下手だ、とわたしの中に正直な感想が現れた。
どうしよう、こんな文字でしか名前を書けないなんて。ああ子供の頃に書道を習っていれば、と今までの人生で何百回と考えたことをまた考える。
紙が一杯になるくらい名前を書いてみたが、下手の度合いが変わるだけの文字が並ぶだけだった。
どうしよう、この文字の名前であきらめるべきか。書けないんだからしかたないよね、いやあきらめたらそこで試合終了だ。
うーむと悩んでいたが、ふと思いついたことがあった。
いわゆる悪戦苦闘

ならない! いやまだまだ
パソコンの画面に文字を表示させて、それを写し取ったらどうだろうか。
わたしはノートパソコンを使っている。
エクセルを呼び出して(ワードでもよかったと思う)名前を入力する。
フォントやサイズを調整する。
画面に表示された自分の名前を見る。画面の上に名前を書く帯を当ててみる。帯の下からうっすらと画面に書かれた名前が透けて見える。
いけるかもしれない。
とりあえずその辺の紙をあてて名前を書いてみるかと思ったのだが、すぐにこれはだめだとわかった。ノートパソコンの画面は限界まで倒しても水平にはならない。
水平にならない画面に紙をあててみても文字は書けない。
いや書いてはみたのだが、線がよれによれたとんでもない文字になってしまった。
それならと画面を水平にしてキーボードを斜めに持ち上げてみたのだが、これもかなり書きづらい。膝立ちの体勢になるし。
プリンターで出力すればいいのだろうが、あいにくわたしはプリンターを持っていない。
だめだったか、いい考えだと思ったんだけどな。
あきらめかけたのだが、わたしはそこで思い出した。
サブの小さなノートパソコンがあった。長いこと使っていなかったので忘れかけていたのだが、その小さなパソコンは画面を取り外すことができるのだ。
あのパソコンなら画面を取り外して水平に置くことができる。
というわけで、それからしまいこんでいたパソコンを引っ張り出し。ものすごく久しぶりに電源を入れ(ボタンがどこだか探した)、画面に表示されたメッセージにちょっと慌て、エクセルを呼び出し、名前を入力し、と一連の流れを済ませた。
文字の微調整に少々時間がかかったが、わたしは無事画面にほどよいサイズとバランスの己の名前を表示させることができた。
さあ後はこの名前を帯に写し取るだけだ。
いやまずは試し書きだ。
そうして何度も試し書きをし、帯は3枚あったのでまずは使わない帯で練習し。
画面の上に直接紙を置いているので、うっかり画面に手が触れて画面が動いたり閉じたりしてうおっとなったりもして。
いよいよ本番の帯に向かうときは筆ペンを握る手に力が入りすぎて、これはいかんと意識して力を抜き。
焦るな慌てるなと自分に言い聞かせながら、ようやく、ようやく名前を書いた。
出来映えは、うーむ、いやまあ、まあまあじゃないでしょうか。
ちょっと作り物っぽい印象の文字になってしまったきらいもあるが、自分本来の文字よりも見栄えはいいと思われる。
帯1枚に名前を書くのにいったいどのくらいの時間がかかったのか。
名前を書くってものすごく大変だ。
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